2022年度に自衛官募集のために、若者の個人情報を記載した名簿を自衛隊に提供した自治体が1068に上り、初めて6割を超えたことが分かりました。防衛省が日本共産党の山添拓参院議員に提出した資料で明らかになりました。
住民基本台帳に記載されている氏名、生年月日、住所、性別の個人情報を、自治体が紙や電子媒体の名簿で提供しています。自衛官の勧誘チラシの郵送などが目的で、高校を卒業する18歳と、大学を卒業する22歳が対象。従来は、多くの自治体が名簿を提供せず、閲覧・書き写しにとどめていました。同省資料によると、22年度に名簿を提供した自治体は、全国1747自治体中1068自治体となり、21年度比で約1割増加。それに対して、住民基本台帳の閲覧は534自治体と、約2割減少しました。閲覧から名簿提供に移行しています。
名簿提供が急増したきっかけは、安倍晋三首相(当時)が19年2月の自民党大会で「都道府県の6割以上が協力を拒否している」と発言したこと。政府は、20年12月に市町村長による住民基本台帳の一部写しの提供は可能だと明確化する閣議決定をしました。
日本平和委員会の千坂純事務局長は「本人の同意なく個人情報を提供するのは、憲法が定める基本的人権を無視している。米国とともに戦争できる『戦争国家づくり』の一環でもあり、不当な手段で募集を強めることに反対の声を上げていくことが必要だ」と指摘します。
一方で、名簿を提供させる背景に、自衛官採用が困難になっている実態があるとみられます。防衛白書によると、22年度の応募者数は前年に比べて1万人近く減少し、過去10年間で初めて8万人を割りました。千坂氏は「『本当に自衛隊員が戦争に投入されるのでは』という認識が広がり、募集が困難になっている。必死に名簿を提供させるのは、自衛隊の焦りや行き詰まりを示しているのではないか」と語りました。
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