ずっと前に買った小さな詩集が出てきた。昭和49年発行のものだからもう40年近く前のものだ。英文と日本語訳の2冊になっていて英文のほうは“Love lyrics”、訳文のほうは「愛の詩」となっている。付属のカセットテープがあったはずだが見当たらない。
愛を歌った英米の抒情詩を集めたもので、シェークスピア、バイロン、シェリー、ポーなどの作品が21篇収められている。この中の一つに、十九世紀の英国の女流詩人であったクリスティーナ・ロゼッティーの“SONG”があり、とくに有名な作品と言うことだ。邦題は「私が死んでも、いとしいあなた」となっている。この詩集を買った当初からとても気に入った詩だ。この詩の一節を引用してみる。
私が死んでも、いとしいあなた、
悲しみの詩(うた)など歌わないでね
バラの花も、木陰をつくる糸杉も
私の枕辺に植えたりしないでね
雨にうたれ、露に濡れた
緑の芝草だけでじゅうぶんなのよ
そして、気が向いたら思い出してくださいね
忘れたって私は構いませんわ。
私はもう暗闇を見ることもなく
雨を感じることもなくなるでしょう
苦しみにたえぬように歌いつづける
あのナイチンゲールの歌声も聞こえないでしょう
そして陽の昇り沈むこともない
薄明の中に夢見ながら
時折はあなたを偲び
また時に忘れもいたしましょう。
(高田久壽訳)
妻が逝った後もこの詩を何度も読んだ。もちろん私はその頃は悲しみの中に沈んでばかりいたが、それでも「薄明の中に夢見ている」妻を想像しては、僅かに心を慰められたものだった。
愛を歌った英米の抒情詩を集めたもので、シェークスピア、バイロン、シェリー、ポーなどの作品が21篇収められている。この中の一つに、十九世紀の英国の女流詩人であったクリスティーナ・ロゼッティーの“SONG”があり、とくに有名な作品と言うことだ。邦題は「私が死んでも、いとしいあなた」となっている。この詩集を買った当初からとても気に入った詩だ。この詩の一節を引用してみる。
私が死んでも、いとしいあなた、
悲しみの詩(うた)など歌わないでね
バラの花も、木陰をつくる糸杉も
私の枕辺に植えたりしないでね
雨にうたれ、露に濡れた
緑の芝草だけでじゅうぶんなのよ
そして、気が向いたら思い出してくださいね
忘れたって私は構いませんわ。
私はもう暗闇を見ることもなく
雨を感じることもなくなるでしょう
苦しみにたえぬように歌いつづける
あのナイチンゲールの歌声も聞こえないでしょう
そして陽の昇り沈むこともない
薄明の中に夢見ながら
時折はあなたを偲び
また時に忘れもいたしましょう。
(高田久壽訳)
妻が逝った後もこの詩を何度も読んだ。もちろん私はその頃は悲しみの中に沈んでばかりいたが、それでも「薄明の中に夢見ている」妻を想像しては、僅かに心を慰められたものだった。