中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

私が死んでも・・・

2010-10-07 09:30:27 | 身辺雑記
 ずっと前に買った小さな詩集が出てきた。昭和49年発行のものだからもう40年近く前のものだ。英文と日本語訳の2冊になっていて英文のほうは“Love lyrics”、訳文のほうは「愛の詩」となっている。付属のカセットテープがあったはずだが見当たらない。

 愛を歌った英米の抒情詩を集めたもので、シェークスピア、バイロン、シェリー、ポーなどの作品が21篇収められている。この中の一つに、十九世紀の英国の女流詩人であったクリスティーナ・ロゼッティーの“SONG”があり、とくに有名な作品と言うことだ。邦題は「私が死んでも、いとしいあなた」となっている。この詩集を買った当初からとても気に入った詩だ。この詩の一節を引用してみる。

 私が死んでも、いとしいあなた、
  悲しみの詩(うた)など歌わないでね
 バラの花も、木陰をつくる糸杉も
  私の枕辺に植えたりしないでね
 雨にうたれ、露に濡れた
  緑の芝草だけでじゅうぶんなのよ
 そして、気が向いたら思い出してくださいね
  忘れたって私は構いませんわ。

 私はもう暗闇を見ることもなく
  雨を感じることもなくなるでしょう
 苦しみにたえぬように歌いつづける
  あのナイチンゲールの歌声も聞こえないでしょう
 そして陽の昇り沈むこともない
   薄明の中に夢見ながら
 時折はあなたを偲び
   また時に忘れもいたしましょう。
                 (高田久壽訳)

 妻が逝った後もこの詩を何度も読んだ。もちろん私はその頃は悲しみの中に沈んでばかりいたが、それでも「薄明の中に夢見ている」妻を想像しては、僅かに心を慰められたものだった。