西安の旅行社で日本の観光客のツアー経費の見積もりやホテルなどの手配をしている李真が先日、急な見積もり請求が日本からあって残業した。
その請求の中に、「毛澤東とか胡錦濤などの中国の主席が使うレストランで食事したい」という客の希望があったそうだ。それで1卓8,800元のメニューを紹介したら、高いと言われて、再度4,500元のメニューを出したようだ。それで納得したのかどうかは聞いていない。
いったいどういうつもりで「国家主席が使うレストラン」などと要求したのか分からない。どんな連中だということは李真の職務上のことだから聞くことはしなかったが、理解できない希望だと思った。西安にはこれまで何回も行ったが、初めての頃の団体ツアーに参加した時にはそれなりのレストランに案内された。しかしその後はそれほど高級なレストランを利用したことはない。私はむしろごくありふれた店の方が好きだ。だから、国家の要人が利用するレストランがどこなのかもまったく知らないし、関心もないが、そういう店の料理は多分高いだろうとは想像できる。
しかし8,800元というと、この4月1日のレートで1元は12.677円だから、11万2千円くらいだ。これが一人当たりの料金だとすると高いが、1卓の料金で希望してきたのは10人くらいの人数らしいから、一人当たりにすれば1万2千円ほど。これくらいのメニューならば日本でもあるし、もっと高いのもある。何か中国は物価が安いという先入観があってひどく高いと思ったのではないか。
李真は「わざわざ主席とか有名人が利用する店を要求するのが気持ち的に嫌。高いと言われたらもっと嫌」と言ったが、その気持ちはよく分かる。おそらく李真は内心では軽蔑感をもったのではないだろうか。日本人として何か気恥ずかしい感じがした。そんな連中はきっと食事を済ませた後で、大したことはなかったとでも言うかもしれないなと言うと、私もそう思うと李真は言った。
それにしても、わざわざ国家主席クラスが使う店などと指定したのはどういうことだったのだろう。帰国してから、そういう店で食事したと自慢したいのか、その後であまり大したことはなかったとでも付け加えて自尊心をちょっぴり満足させるのか、いずれにしてもつまらないことだと思った。
これまでにも李真達から、日本の旅行社の嵩にかかったような要求や、観光客や添乗員の無礼な振る舞いをたびたび聞いていたが、なかなか気疲れのする仕事だと思う。