家の近くの路を歩いていると、前から来た白いワゴン車の前に、大きく筆記体でRaccoonと書いてあった。会社か店の名前だろう。やり過ごしてからラクーンかと思い、その動物のちょっとひょうきんな顔が頭に浮かんだが、さて、このラクーンの和名は何だっただろうと考えたが思い出せない。外来種のこの動物は最近あちこちに出没して、寺院などでも害を及ぼしていることまで思い出したが、名前はさっぱり出てこない。アナグマだったかな、いや違うと考えているうちに家に着いた。
家に着いてすぐに英和辞典を引くと、アライグマとあり、そうそうアライグマだったと納得した。人の名前、物や動植物の名をすぐに思い出すことができなくて苛立つのは、今に始まったことではないが、最近はますますひどくなっているようで、いささか情けない。 せっかく分かったのだから、ついでにとアライグマをGoogleで検索し、Wikipediaで調べてみた。
アライグマ(洗熊、浣熊)は北米原産で、もともと日本には生息していなかったが、1962年に岐阜県で初めて野生繁殖が確認された。これは愛知県の動物園から逃亡したものだった。1970年代以降にはアニメの「あらいぐまラスカル」の人気などで、ペットとして米国から多数輸入され家庭でも盛んに飼育されるようになった。見かけは可愛いが成獣になると気が荒く、犬や猫のようなペット感覚では飼い切れない。それで飼い主が捨てたり逃亡したりして野性化するようになった。天敵の肉食獣がいなかったために急速に住みかを広げて、40を超える都道府県で生息確認されるようになり、北海道、東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、和歌山県では繁殖が確認された。
前足を器用に使い、木登りや泳ぎが得意である。雑食性で、両生類、爬虫類、鳥類の卵、昆虫類、甲殻類、果実や、畑にあるトウモロコシなどの農作物も食べる。 視覚があまりよくないため前足を水中に突っ込んで獲物を探る姿が手を洗っているように見えることから、その名がついた。
見かけは愛嬌があるが実態は害獣で、作物や錦鯉などの食害があるほか、寺社などの屋根裏に侵入してねぐらにすることで汚損されることがよくあり、時折新聞記事になったりしている。カエルやカメ、サンショウウオ、ネズミなどの小動物類を幅広く捕食する雑食性の上に繁殖力が強いため、在来生態系に影響を与えている可能性も指摘されている。このようなことから、日本生態学会指定「日本の侵略的外来種ワースト100」のトップに挙げられている。そういうこともあって、アライグマの防除を実行しようとしている地方自治体もあるようだが、一部の動物愛護団体が、それはアライグマを殺戮するものだと反対し自治体に圧力をかけ続けているそうだ。シー・シェパードのような動物「愛護」団体は、どこにもあるものだ。