中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

風評被害

2011-04-10 10:45:38 | 身辺雑記

 今回の大地震津波の被害に対しては国の内外から支援活動が行われているが、福島原発の損壊による被害に関連しては、国際的にさまざまなネガティーブな反応があるようだ。ロシア政府は日本に寄港する航空機が飲料水や食料を積み込むことを禁止したり、京都の茶所の宇治の茶がアメリカや中国などから輸入拒否されたり、シンガポールでは愛媛や兵庫を含めて11都府県の野菜に国際基準を上回る放射性物質があったとして輸入禁止になった。中国では上海などの沿岸部で、塩が大量に買い漁られたと言う。塩は放射性物質に「効く」という根拠のない噂に踊らされたらしい。沿岸部からはるか離れた内陸部の西安でも塩の買い漁りがあったと李真から聞いた。韓国では全土に雨が降った日には、首都圏の幼稚園や学校の100校以上が休校になった。目に見えない放射能というものは、限りない恐怖と疑心を生むものだ。

 

 福島から離れている京都の茶がどうして放射線に汚染されているとされたのが分からないが、中国やアメリカなどの国土の大きな国から見れば、福島と京都などはほんのすぐそばにあるように思われるのかも知れないし、どこの国でも日本の地理のことなどよく知ってはいないだろうから、今回の原発事故で日本中が放射能に汚染されているとも思うのだろう。外国が過敏な反応をするのは仕方がないと思いもする。日本でもあの中国産毒餃子事件の後に中国産の食品に対する拒否反応が広まって、今でも中国産は絶対に買わないという人はいる。外食すれば多くの食材には中国産のものが使われているらしいのにとおかしく思うこともあるが、それが普通の反応なのかも知れない。しかし、国内での被災地、とくに福島に対する風評被害ではどうにかならないものかと思う。福島に限らず周辺の府県産の野菜や海産物を忌避しているのにも行き過ぎを感じることもあるが、福島産の工業製品までが不安の対象になっているというニュースを見ていささか驚いた。

 

 福島県が県内企業からの強い要望を受けて県が独自に実施を決めためた工業製品の放射性物質汚染を調べるスクリーニング検査には、県内の業者から予約が殺到したと言う。検査に持ち込まれるのは注射器などの医療機器、自動車のメーターやエンジン部品、掃除機や着物などさまざまだそうだ。取引先から「安全証明書がなければ契約を打ち切る」と通告された業者もあり、家内工業で手作り製品を出荷してきた、あるかばん製造業者も大手百貨店から「今後は安全が確認できなければ購入しない」と通告されたという。愚かしいとも横暴とも思う。よほど頭の悪い社員が納入業者を見下したように対応しているのではないか。郡山市の梱包材メーカーは、震災前に出荷した商品ですら、返品されてしまう状況だそうで、まったく無茶としか言いようがない。

 

 放射性物質を吸収する可能性のある野菜や魚介類を敬遠するのはまだ分かる。しかし工業製品をなぜ恐れるのかまったく理解ができない。県の検査責任者の主任専門研究員は「製品に放射性物質がしみ込むことはなく、人体に影響があるとは考えられない。屋内で作った製品まで検査する必要があるのか」と疑問を投げかけているという。県によると、県内には約9000の製造業者があり、出荷額は年間約5兆円で東北地方最大だそうで、風評被害が続けば損害額は計り知れないようだ。

 

 被災地に対してさまざまな形で支援していくことは当然のことだが、風評に乗った行き過ぎた行為はそれと矛盾しないか。前記の大手百貨店にしても表向きは支援キャンペーンや募金活動などをしているだろうにと思うが、支援と商売とは違うということか。一般の市民にしても、被災地には同情してカンパなどをするのに、一方では風評に惑わされて福島やその近くの県の産物を忌避するのは矛盾してはいないか。そのことによって農家の人たちが苦しむということには考えが及ばないのだろうか。

 

 どうにも首をかしげる思いをしたのは、この福島県の工業製品に対する反応について、あるサイトの書き込みには、当然だとする声がほとんどだということだ。風評被害ではない、実害だと言い切っているのもあった。実際に福島の工業製品で害を被ったとでも言うのだろうか。書き込みの文体から見て、多くは若い人たちのようだが、このような冷然とした傍観者的態度は、風評被害に泣く中小業者に、怒りを通り越した思いをさせるものではないか。