少し前のことだが、北京市内の高速道路を走行中の、犬約520匹を積んだトラックが300人以上の群衆に取り囲まれ、犬の搬送を阻止されたという記事を見た。
犬はこのトラックの運転手が河南省で、1キロ当たり14元で犬を購入、吉林省長春市へ搬送中で、犬は食肉処理場で処理され、レストランに運ばれる予定だった。阻止したのは、インターネット上で搬送を知った中国小動物保護協会の愛犬家らだった。
愛犬家側は最終的にはすべての犬を1万5000元(約150万円)で買い取ることになって騒ぎは収まったと言う。愛犬家たちが暴力に訴えることなく、犬を買い取るということで事態を収めたのは賢明だったと思う。米国のシー・シェパードのように独善的に「正義」を振りかざして暴力行為も辞せないような過激なものでなく、このように平和的に解決したのは、東洋人と欧米人の違いかと思ったりした。本当の動物愛護というものは、こういうものではないか。
中国の地方に行くと、犬や猫の姿を見ることはよくあるが、ただの飼い犬、飼い猫というような吞気な感じで、とくに犬は気儘に歩き廻っている。
しかし、生活水準の向上によって都市部では犬や猫などのペット愛好家が増加しているようだ。上海で見たペットショップでもさまざまな種類の犬や猫が売られていて、訪れる人が多いようだった。愛犬家が寄付金などで犬を守った今回の一件は、動物愛護意識の高まりを示す実例と言えそうだと、報じた記事にあった。
一方で中国は韓国などと同じように、昔から犬をよく食べていた。地方の市場に行っても皮を剥がれた犬が吊られているのを見ることがある。2001年に、西安でガイドしてくれた廖漢波(リャオ・ハンポ)という青年の故郷の広西チュワン族自治区の徳保という町を訪れたが、その時同行した二人の卒業生の女性が、廖君の家の屋上に可愛い犬がいるのを見て、「名前は何と言うの」と尋ねたら、「食べる犬だから名前なんてありませんよ」とあっさり返答されてびっくりしていた。家では処理しないで、専門の業者にやってもらうのだそうだ。その時には犬料理は出されなかったが、私はその後2008年に、広東省の開平という町で食べたが、取り立てて美味いとは思わなかった。
現在では、その特異な風貌からペットとして愛玩されているチャウチャウは、かつては中国では食用犬とされていた。
Wikipediaより
中国政府は今月、中国で初めて動物保護を明記した「反動物虐待法案」を全国人民代表大会(国会に相当)に提出する見通しとなったというニュースを見た。この法案には、犬と猫の肉の食用禁止の文言が入っており、食べたり、販売した個人には5000元(約65000円)以下の罰金と15日以下の禁固に処せられるそうだ。犬肉料理で有名な江蘇省徐州市などでは衝撃が走っているという。
犬や猫をペットとして飼う人々が増えていて、「イヌやネコを食べるなんて、野蛮な風習だ」との声も高まっているようだから、政府もこのような法案を出すことになったのだろう。しかし禁止されればされるほど、こっそり食べようとする者も出てくるのではないだろうか。古代から続いているこの食習慣はすぐにはなくならないような気がする。