今から5年前の2008年1月に中国で製造された冷凍餃子を食べた千葉と兵庫両県の3家族10人が一時意識不明の重体に陥るなどした事件がありました。この事件をきっかけに少々過剰にも思える中国製品忌避の動きが消費者の間に広がり、その影響は今も続いています。
この事件で餃子製造元の食品会社の臨時従業員が危険物質投入罪で2010年に逮捕、起訴されました。中国側の発表によると、この従業員は賃金待遇や同僚への不満などから腹いせに有機リン酸系殺虫剤を混入させたというものです。
事件から5年、容疑者逮捕、起訴から3年も公判は開かれず、何とも悠長なことで、中国当局は事件をうやむやにするのではないかとも疑われました。同年9月に沖縄県・尖閣諸島の日本領海で発生した中国漁船衝突事件をきっかけに日中関係が急激に悪化したため、「判決が中国社会や日中関係に与える影響に配慮し、開廷時期を探っていた」(日中筋)との見方が広がっていたようです。
何でも彼でも「尖閣」で、これさえ持ち出せば中国国民を納得させることができるのかと疑問に思います。「造反有理」ならぬ「尖閣有理」ということなのでしょうか。一方では人権問題なので国民を抑圧し、対日本の問題になると自分に火の粉がかからないようにするという中国当局のあり方は滑稽なくらいです。事件のあった中国河北省石家荘市の裁判所がすぐに公判を開かず、今頃になって開く(初公判は今月30日)というのは、日本など先進民主国家のような三権分立などはなく、裁判所も中国共産党支配のもとに置かれている実態を顕わにしたものでしょう。
中国の刑法では危険物質投入罪は10年以上の懲役、無期懲役、あるいは死刑と規定されているようですが、このような裁判所の実態では裁判の結果もいろいろと屁理屈を振り回して、おそらくは甘いものになるのではないかと想像します。この事件は中国製品に対する信頼を極端に失墜させましたが、中国政府はどう考えているのかと思います。