私が高校に勤めて5年目に入学してきた学年の、1年5組というクラスの同窓会があった。1962(昭和37)年に入学したから、今から49年前のことになる。3年生のときのクラス会をするのはよくあり、それが普通だが、1年生の時のクラスが集まるというのは珍しい。よほど良い思い出があるのだろう。
クラス担任は化学担当のO先生で、私はこのクラスは教えなかった。クラス会をすると聞き、O先生も出席されるということなので、O先生に会いたいと言ったことが伝わって、私も招いてくれた。ついでに範囲を広げようということになったようで、会場に行ってみると、3年生の時に担任していたクラスの生徒や、久しぶりに会った顔もあって嬉しかった。
卒業してから学年会やクラス会を開くには、よほど熱心な幹事役がいないとできない。このクラス会は副委員長をしていたOさんという女性が中心になり、それにK君、Ouさんの2人が加わり、念入りな準備と会の進行をしてくれた。とりわけOさんのきめ細かい、それでいて控えめな幹事ぶりは快かった。
この学年の生徒は私より13歳下だから64,5 歳になる。それぞれ年相応の風貌、容姿になっていたが、幹事のOさんなどは高校生時代の面影そのままだったし、どう見ても60半ばとは思えない若々しい女性もいた。それでも50年近い歳月にはそれぞれいろいろなことがあったようで、女性の中には夫君を亡くしたのも2人いたし、男性の多くはもう引退生活を送っているが、中にはまだ元気に働いている現役もいた。
同窓会というものは、顔を合わせたとたんに、途中の何十年かの歳月は飛んでしまって、昔にかえってしまうのが面白い。それだけに高校時代というものは懐かしいものなのだろう。皆、楽しそうにその頃のクラスのことやクラブ活動のことを話し、私もその中に入っていると、すっかりその当時の気持ちになってしまい、実に楽しかった。いろいろあの頃のことを思い返すと、いつも言っていることだが、あの時代に、あの学校で教師になったことは本当に良かったと改めて思った。
クラス担任だったO先生は、今年82歳になられるとか、数年前に夫人を亡くされ、今は私と同じ独居生活、と言っても現役時代からの趣味であるサボテン栽培と囲碁を楽しみ、阪神タイガースを応援する、まさに悠々自適の生活で、とくに趣味もなくのんべんだらりと日を送っている私は恥ずかしい思いをした。穏やかな性格で、今も当時の1年5組の生徒達が訪れるようで、温和な人柄が慕われるのだろう。
校歌を皆で歌い、写真を撮ってお開きとなり、その後は会場近くで同じ学年の女性が経営している喫茶店での二次会となった。これにも出席者全員が参加し、お茶とケーキの会は大いに盛り上がり非常に楽しく、近頃少し体調がよくないことなど霧散した。
よく本を読みに行く、近くのJR駅の構内のエキナカマーケットにある喫茶室で、近くの高校の4人の女生徒を見た。テーブルにノートを広げてレポートか何かを書いているようで、時々手を休めて楽しそうに話をしている。2年生ぐらいだったが、いかにも年頃の娘らしい明るく可愛い様子だった。何となく微笑ましい感じで目を遣っていたが、クラス同窓会で会った彼、彼女達もこのような生徒達だったのだろう、この子達も40年、50年たった時に同窓会をするのかも知れない、その時にはどんな思い出話をするのだろうかと考えた。