蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

つまらない住宅地のすべての家

2025年01月28日 | 本の感想
つまらない住宅地のすべての家(津村記久子 双葉社)

近所にスーパーは1軒しかなく、コンビニも遠くにしかない、特にとりえもない古びた住宅地に並ぶ10の家。妻が出ていった父子家庭、老夫婦2人の家庭、独身の若者一人の家、近所の大学の教職の夫婦、放浪癖がある息子に悩む夫婦 等々。そんな住宅地の近所に実家がある女性が刑務所を脱獄する。その女が実家に帰ってくるのでは?と疑われ・・・という話。

初出はミステリ雑誌の連載。津村さんがミステリ?と半信半疑で読み始めた。典型的なミステリではないけれどサスペンスの風味は漂い、しかし最後はいかにも津村さん、という結末に着地する。

200ページ強の分量の割に登場人物がやたら多く、しかも多くの場合ファーストネームで記述されているので、中盤くらいまで冒頭に掲げられた地図をいちいち参照しないと誰が誰だがわからない。
単に私の記憶力が衰えただけなのか?ただ、一応名前を覚えた後は、直感的なわかりにくさがミステリ的興趣を醸し出しているような気もした。

全くバラバラに見えた10(脱獄犯のそれも加えると11)の家族の話がラストでキレイに収束するのはお見事の一言。各種書評で高く評価されているのも理解できる。

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