森に眠る魚(角田光代 双葉社)
「他人と比べることで人は不要な不幸を背負いこむ。学生のとき、容子はすでにそう悟っていた。それは容子のなかでまぎれもない真実だった。人は人。私は私。その線引きをしっかりさせて日々を送りたいと思っていたし、実際そうしてきた。けれど気がつけば、親しくなった人のマンションをこっそり見にいってしまうような自分がいる。そんなことはやめろ、やめろと思いはするのだ。みっともないと自覚もしている。けれど、彼女たちがどんなところに住んでいるのか知りたいと一度でも思うと、じりじりしてたまらなくなる。」
(単行本P118)
幼い子供を持つ母親が知り合い、自宅に訪問しあうほど仲良くなるのだが、子供の「お受験」をきっかけとして、子供の優劣や家庭・経済環境がお互いにに気になりはじめ、心理的追いつめられる母親も出てきて・・・という話。
いわゆるお受験殺人事件をモチーフにいた心理劇的小説。冒頭の引用部分のように、母親たちは互いに牽制しあい、自分より相手の子供の方が出来がいいのではないか、相手の方が裕福なのではないか、陰で私のことを謗っているのではなか、そんな疑心暗鬼にとらわれて自分で自分を追い詰めていく。
確かに、不幸は比較から始まることが多い。そうわかっていても、他人のあふれるような幸福には誰しも嫉妬を覚えるし、他人の不幸は蜜の味なのである。逆にそういったほの暗いジェラシーをエネルギーに変えて人間は進歩していくという面もあるのだろうが。
本書は賞を受けているし、角田さんの代表作の一つとされているが、「対岸の彼女」と違って重苦しさが最後まで続いてしまうし、「八月の蝉」と違って救いもなく、「最後まで読み通してよかった」という感じがどうしてもわかなかった。
「他人と比べることで人は不要な不幸を背負いこむ。学生のとき、容子はすでにそう悟っていた。それは容子のなかでまぎれもない真実だった。人は人。私は私。その線引きをしっかりさせて日々を送りたいと思っていたし、実際そうしてきた。けれど気がつけば、親しくなった人のマンションをこっそり見にいってしまうような自分がいる。そんなことはやめろ、やめろと思いはするのだ。みっともないと自覚もしている。けれど、彼女たちがどんなところに住んでいるのか知りたいと一度でも思うと、じりじりしてたまらなくなる。」
(単行本P118)
幼い子供を持つ母親が知り合い、自宅に訪問しあうほど仲良くなるのだが、子供の「お受験」をきっかけとして、子供の優劣や家庭・経済環境がお互いにに気になりはじめ、心理的追いつめられる母親も出てきて・・・という話。
いわゆるお受験殺人事件をモチーフにいた心理劇的小説。冒頭の引用部分のように、母親たちは互いに牽制しあい、自分より相手の子供の方が出来がいいのではないか、相手の方が裕福なのではないか、陰で私のことを謗っているのではなか、そんな疑心暗鬼にとらわれて自分で自分を追い詰めていく。
確かに、不幸は比較から始まることが多い。そうわかっていても、他人のあふれるような幸福には誰しも嫉妬を覚えるし、他人の不幸は蜜の味なのである。逆にそういったほの暗いジェラシーをエネルギーに変えて人間は進歩していくという面もあるのだろうが。
本書は賞を受けているし、角田さんの代表作の一つとされているが、「対岸の彼女」と違って重苦しさが最後まで続いてしまうし、「八月の蝉」と違って救いもなく、「最後まで読み通してよかった」という感じがどうしてもわかなかった。