スパイたちの遺産(ジョン・ル・カレ 早川書房)
イギリスの元大物スパイ:ピーター・ギラムは、ブルターニュの田舎町で引退生活を送っていたが、昔の諜報作戦(ウィンドフォール)で殺された(ピーターの同僚の)アレックの息子がイギリスの情報部に(父の死の責任は情報部にあるとして)訴訟を起こそうとしている、として情報部に呼び出される。ピーターはウィンドフォールの記録を読み始めるが・・・という話。
著者の最高傑作は「寒い国から来たスパイ」だと思う。世に名高いスマイリー三部作は、表現が文学的すぎて(平たく言うと迂遠で晦渋)読んでいてストレスがたまる。そこへいくと「寒い国・・・」は、ストーリー展開が早くてあっと驚く結末も明瞭だ。
本作は「寒い国・・・」で展開されたスマイリーの巧妙(というか狡猾)な二重スパイ作戦の裏側の真相を明らかにしていて、(初めはそうとは知らずに読んでいたので)しだいに昔の記憶がよみがえってきて、ちょっと興奮した。
ただ、持って回った言い回しは三部作の方に近くて、読み返さないと筋が理解できなくなる箇所がいくつかあった。
それにしても、著者の作品を読むたびに思うのだが、二重スパイや味方の情報部の中での仲間割れで、スパイ活動が本当に国の役にたっているのか、むしろやればやるほど国益を害しているのではないか?と考えさせられる。著者は昔、本物のスパイだったらしいと知るとなおさらである。
もっとも著者もそのあたりは自覚があるらしく、本作の終盤でアレックの息子はピーターに対してこんなセリフを吐く。
「あんたらは全員病気だ。あんたらスパイは。治療法じゃなくて、病気そのものだ。マスかきのプロで、お互いマスかきゲームをして、自分たちは宇宙一くそ利口な大物だと思いこんでいる。人間のくずだ。聞いてるか?くそ暗いところで生きてるのは、くそ日光が手に負えないからだ。親父もだ。おれにそう言った」
イギリスの元大物スパイ:ピーター・ギラムは、ブルターニュの田舎町で引退生活を送っていたが、昔の諜報作戦(ウィンドフォール)で殺された(ピーターの同僚の)アレックの息子がイギリスの情報部に(父の死の責任は情報部にあるとして)訴訟を起こそうとしている、として情報部に呼び出される。ピーターはウィンドフォールの記録を読み始めるが・・・という話。
著者の最高傑作は「寒い国から来たスパイ」だと思う。世に名高いスマイリー三部作は、表現が文学的すぎて(平たく言うと迂遠で晦渋)読んでいてストレスがたまる。そこへいくと「寒い国・・・」は、ストーリー展開が早くてあっと驚く結末も明瞭だ。
本作は「寒い国・・・」で展開されたスマイリーの巧妙(というか狡猾)な二重スパイ作戦の裏側の真相を明らかにしていて、(初めはそうとは知らずに読んでいたので)しだいに昔の記憶がよみがえってきて、ちょっと興奮した。
ただ、持って回った言い回しは三部作の方に近くて、読み返さないと筋が理解できなくなる箇所がいくつかあった。
それにしても、著者の作品を読むたびに思うのだが、二重スパイや味方の情報部の中での仲間割れで、スパイ活動が本当に国の役にたっているのか、むしろやればやるほど国益を害しているのではないか?と考えさせられる。著者は昔、本物のスパイだったらしいと知るとなおさらである。
もっとも著者もそのあたりは自覚があるらしく、本作の終盤でアレックの息子はピーターに対してこんなセリフを吐く。
「あんたらは全員病気だ。あんたらスパイは。治療法じゃなくて、病気そのものだ。マスかきのプロで、お互いマスかきゲームをして、自分たちは宇宙一くそ利口な大物だと思いこんでいる。人間のくずだ。聞いてるか?くそ暗いところで生きてるのは、くそ日光が手に負えないからだ。親父もだ。おれにそう言った」