蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

イタリアのしっぽ

2018年11月03日 | 本の感想
イタリアのしっぽ(内田洋子 集英社)

イタリアで暮らす著者が自分自身のペットやイタリアのペット事情を紹介するエッセイ。
のはずなのだが、あまりペットの話題が頻繁に出てくることはなくて、著者の知人のイタリア人の暮らしぶりを描いている部分が多い。あまりに話が出来すぎていて「本当にあったことなのか?それとも著者の創作なのか?」と思えるエピソードが多いのもいつも通り。

印象に残ったのは・・・

狭くけど恐ろしく片付いたアパートで親子4人が暮らす獣医(ルイザ)。きっちりしすぎていて家族の心は離れていく、という話。

毎年ゼラニウムをたくさん買い込んで家に飾る老婦人(リア)。ゼラニウムは強い植物のはずなのに彼女が毎年全部入れ替えているのは、なぜ?という話。

著名なノンフィクション作家(イレーネ)を日本に招き、中国などの東洋文化の専門家である彼女を驚かすために連れて行った場所は?という話。長年中国に滞在したイレーネの(中国かぶれした)暮らしぶりを描写した部分が特に印象的。
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言ってはいけない中国の真実

2018年11月03日 | 本の感想
言ってはいけない中国の真実(橘玲 新潮文庫)

中国各地の鬼城(大規模開発が行われて巨大な建築群が作られたのにほとんど人が住んでおらずゴーストタウン化した地域を指す)を観光?した著者が、現代中国の社会構造とそこに至る歴史について書いたエッセイ。以下、印象に残った内容。

歴史的に見て、いつの時代も巨大な面積と人口を抱える中華地域は、常に世界の先頭を走る文明地域であったにもかかわらず、ヨーロッパのように小さな国家群に分裂せず、1つの政権が支配してきた原因は、緻密に組織された官僚制度と血族的つながりを重視する各地域の宗族(同姓集団)にあるとする。科挙により(身分差別なく)選定された優秀な役人は各地域の宗族の支配階級(士大夫)と協調して広大な地域、莫大な人口を支配した。しかし、長年の支配が続くと彼らも腐敗し富が集中し、(それにより貧困化した)農民反乱により王朝は崩壊し、全国的な騒乱により人口は激減する。この調整により富は再び散在し、骨格だけ残った官僚と宗族を再編すれば再び巨大支配装置は動きだす、という。

共産党支配のもと、言論統制は厳しいが、役人などの腐敗告発はむしろ推奨され、実施されれば現実の取締に結びつくことが多いという。経済犯罪に対しても死刑が適用されるなど制度も厳格だが、一方で役人の給料は極端に安いので清廉潔白にしていたは暮らしていけないので、腐敗は決してなくならない、という。

戦争責任は国にあり個々人レベルに責任はない、と規定しないと戦後処理はできない。例えばドイツ人とユダヤ人は(個々人の戦争責任を問えば)戦争が終わっても一緒にくらしていけない。ドイツにはヒトラーという責任を象徴する人物がいる。天皇が免責された日本にはそんな便利?な人物はいなかったが、あえて挙げるとするなら絞首刑に処されたA級戦犯である。そんなA級戦犯を祀る靖国を総理が参拝するなら、個々人のレベルから戦争責任を切り離して、それを国に帰責させるという論理が成立しなくなってしまう、という。

中国起源のIT企業は政府の規制を歓迎している。グーグルやFBの模倣をしたサービスを作った後に政府の厳しい規制でこうした欧米企業が撤退すれば、巨大市場を独占できる。利用人口が多いので、海外に進出しなくても中国国内だけでも十分に収益はあげられる、という。
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