蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ハンターキラー

2019年11月04日 | 映画の感想
ハンターキラー

バレンツ海でアメリカの潜水艦がロシア軍の攻撃により撃沈される。アメリカ軍は対抗措置として攻撃型原潜アーカンソーを現地に派遣する。アーカンソー艦長には潜水艦乗り叩き上げのジョー・グラス(ジェラルド・バトラー)が任命される。北海沿岸のロシア軍基地では、基地を訪問したロシア大統領を、国防大臣が拉致してクーデターを企てていた・・・という話。

予告編がとても面白そうだったし、潜水艦ものにハズレなし、と思って観てみたのだが・・・

うーん、前半でアーカンソーとロシア軍潜水艦が戦うあたりはまあまあだったし、アーカンソーの艦内の描写とか、アメリカ政府が意思決定するシチュエーションルームの雰囲気なんかはそれらしかったのだが、いかんせん、全体のストーリーが破綻していた。

だいたい、ロシア海軍とアメリカ海軍が正面切って戦って前者が勝てると思う軍人がいるはずないよね、とか、
そうはいってもマジな戦争になりそうな局面だ派遣するのが原潜1隻と特殊部隊4人だけというのはどうよ、とか、
アーカンソーが最後に危機を脱する筋書きは「さすがにそれはありえんだろ」みたいな感じだとか・・・
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独ソ戦

2019年11月04日 | 本の感想
独ソ戦(大木毅 岩波新書)

私個人の、第2次世界大戦におけるドイツ軍の印象は、パウル・カレルの「焦土作戦」「バルバロッサ作戦」「砂漠のキツネ」「彼らは来た」などの著作によって形作られた。
彼の著作では、ドイツ軍は精強だったがヒトラーの誤った介入によって敗れた、みたいな論調が多くて、ロンメル、マンシュタイン、マントイフェルといった有名な将軍はすべて天才的指揮官として描写されていたような記憶がある。

ところがパウル・カレル(本名はカール・シュミット)が、かつてはナチ党員でSS中佐であったことが暴かれて、彼の著作は全く信用をなくしてしまった。このことが日本に伝わってきた時は、けっこうショックだった。

多くの本は図書館で借りて読んだが、「焦土作戦」(独ソ戦の前半部分から終結までを描いたかなり分厚い本)だけは、買って読んだ。当時としてはかなり高価で、なけなしの小遣いをためてやっとこさ買った本だったので大部にもかかわらず繰り返し読んだ。マンシュタインのバックブローとかチェルカッシイの包囲戦とかを興奮しつつ読んだ思い出は今でも鮮明だ。私に限らず、それなりの数の人が彼の著作の影響を受けていたと思う。

本書は、私のような「ドイツ軍観」を破壊する内容。
独ソ戦は、イデオロギーが鋭く対立した民族絶滅戦争で、
ドイツ軍もソ連への侵攻に積極的であり、
ヒトラーの介入により戦況が悪化した場面はあったが逆のこともあり、
ソ連の軍事理論は特に戦略面においてドイツを凌駕していてドイツの敗北は必然であった、
などとする。

うーん、そうはいっても、すべて首肯することは若干抵抗があって、ドイツが軍事的もしくは戦略的勝利を得ることができたかもしれない局面もいくつかはあったと思うし、戦略面ではアメリカの援助がソ連勝利の決定的要因の一つだったことが軽視されていたようにも思った。

しかし、本書によって、独ソ戦が犠牲者数から見て人類史上最大の殺し合いであったことにあらためて気づかされた。これまで戦術や兵器の観点に傾きがちだった見方が本書によって更新されてことは確かだ。
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ボルグ/マッケンロー 炎の男と氷の男

2019年11月04日 | 映画の感想
ボルグ/マッケンロー 炎の男と氷の男

1980年の、ボルグがマッケンローを破ってウインブルドン5連覇を成し遂げた試合を中心に、彼らの生い立ちとトップ選手ゆえの重圧と戦う姿を描く。

1980年頃というと、日本(人)が強くないのに(観るスポーツとして)人気があるプロスポーツは、テニスとカーレースだったような記憶がある。
F1ではハントとラウダ、女子テニスではナブラチロワとエバートといった強力な同世代ライバルがしのぎを削る姿に人気が集まった。男子テニスでもボルグVSコナーズ、マッケンローVSレンドルというライバルが火花を散らした。

私としては、ボルグのライバルというとコナーズって感じなんだよなあ。しかし、本作でも紹介されているように、ボルグのウインブルドン(今よりも最高峰感が強かった)5連覇目の相手はマッケンローで、6連覇目を阻んだのもまたマッケンローだったことからすると、やはり、マッケンローこそが最大の好敵手だったと言えるのかもしれない。

邦題にもあるように、氷のように冷静なボルグと炎のように悪態をつきまくるマッケンローという好対照な性格もライバル物語を盛りあげた要因だ。
しかし、本作によると、アマチュア時代のボルグは、すぐ癇癪玉を破裂させるような激情家だったらしく、プロになってからは厳しいルーチンでそれを抑え込んでいたそうである。
ボルグ以上に意外だったのはマッケンローのほうで、有名な弁護士である父親から英才教育を受けた坊ちゃん育ちだったとのこと。
そうした生い立ちに反発して“悪童”になったのかと思いきや、ウインブルドン出場に泊まっていたホテルで父親からアドバイスを受けるという過保護?ぶりだったというから、人はみかけによらないもの・・・(実話なのかどうかはよくわからないが)

ハントとラウダを描いた映画「ラッシュ」がとても良かったことを思い出して(ツ●ヤの店頭で見かけた)本作も観てみた。「ラッシュ」にはちょっと及ばない(特にテニスのシーンに迫力がなかった)けど、本作も良い出来だった。
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