蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

続横道世之介

2020年01月25日 | 本の感想
続横道世之介(吉田修一 中央公論新社)

吉田修一さんというと、現時点で日本を代表する小説家の一人といえると思うが、なぜだか私は縁遠くて、「横道世之介」しか読んだことがない。それも映画の「横道世之介」がたいそうよかったので原作を読んでみたというのが経緯だ。

ところが、最近たまたま吉田さんの作品の「国宝」を読んだのだけれど、歌舞伎界の裏話という地味な素材なのに恐ろしく面白かったので、他の作品も読んでみよう、ということで続編を読んでみた。

前作はバブル時代の大学生のなんでもない日常を描いたもので、私もそれに近い時代に学生だったのでとても共感できたのだが、本作は、世之介が大学卒業後も就職できず(そのことは前作でも暗示されてはいた)プータローとして過ごす一年を描いている。私はそういう経験はないのだけれど、前作と同じように世之介と一緒に居酒屋で飲んで話を聞いているような気分になれた。そしてやはり前作と同様、世之介のカノジョ(本作では桜子)がとてもとてもチャーミングなのだった。

こんなつまらない(失礼)材料や背景で、これだけ面白い小説が書けるというのは、やはり、著者の力量は並々ならぬものがあるのだろう。
「国宝」の次は「怒り」か「悪人」を読んでみようかな。(蛇足だが、こうして代表作を並べてみると、タイトルがイマイチかなあ)
コメント
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