嘘の木(フランシス・ハーディング 東京創元社)
14歳のフェイス・サンダリーの父エラスムスは著名な博物学者だったが、標本の偽造疑惑が持ち上がり、イギリス南部のヴェイン島へ家族ともども移住する。エラスムスは、嘘の木(人のウソを貯め込んで真実の実をつける。その実を食べると隠された真実のビジョンを得ることができる)を秘かに島に持ち込んでいたが、崖から落ちて死んでしまう。フェイスは父の死の真相を知るために嘘の木を成長させようとする・・・という話。
本作の魅力は、「嘘の木」の存在だけがファンタジーで、その他の部分は19世紀終わりのイギリスの社会構造や風俗を(多分)そのまま再現している点にあると思う。隠そうとすればするほどウソが大きくなっていくように、ファンタジー設定を絞りこめば絞り込むほど現実との乖離が拡大して物語を盛り上げているように思えた。
そして、単純な復讐譚に終わらせることなく、現実の世間の世知辛さや思わぬ親愛(フェイスの母:マートルが一見世間知らずの奥様のように見えて実は・・・とか、冷淡そうに見えた家政婦のベレや郵便局長のハンターが一転・・・・など)も加えることで、興趣を添えている。
14歳のフェイス・サンダリーの父エラスムスは著名な博物学者だったが、標本の偽造疑惑が持ち上がり、イギリス南部のヴェイン島へ家族ともども移住する。エラスムスは、嘘の木(人のウソを貯め込んで真実の実をつける。その実を食べると隠された真実のビジョンを得ることができる)を秘かに島に持ち込んでいたが、崖から落ちて死んでしまう。フェイスは父の死の真相を知るために嘘の木を成長させようとする・・・という話。
本作の魅力は、「嘘の木」の存在だけがファンタジーで、その他の部分は19世紀終わりのイギリスの社会構造や風俗を(多分)そのまま再現している点にあると思う。隠そうとすればするほどウソが大きくなっていくように、ファンタジー設定を絞りこめば絞り込むほど現実との乖離が拡大して物語を盛り上げているように思えた。
そして、単純な復讐譚に終わらせることなく、現実の世間の世知辛さや思わぬ親愛(フェイスの母:マートルが一見世間知らずの奥様のように見えて実は・・・とか、冷淡そうに見えた家政婦のベレや郵便局長のハンターが一転・・・・など)も加えることで、興趣を添えている。