蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

地球行商人 味の素グリーンベレー

2024年09月06日 | 本の感想
地球行商人 味の素グリーンベレー(黒木亮 中央公論新社)

会社情報誌などの味の素の寸評に、海外で独自販売網を持つ、みたいな表現をみかけることがある。味の素のような大きな会社だったら、商社や現地の代理店にまかせっきりなんだろうな、と想像されるところだが、本書で紹介されているように、日本人社員(精鋭?部隊であることからグリーンベレーと呼ばれる)が、現地の人を雇って正真正銘の直販体制を築いているらしい。

それも欧米のような国ではなくて、東南アジアやアフリカといったまさに未開拓マーケットをイチから掘り起こしているのだからすごい。

本書ではアラブの春の頃のエジプトの革命発生の頃が描かれるが、出歩くのも危険な情勢下で、何事もないように現地の市場で営業活動を(日本人社員を含めて)行っているシーンが描かれている。その日本人社員が誰でも知っているような一流大学卒というのにも驚かされる。「こんな仕事やってられるか!」とか言ってすぐにも転職しそうな気がするのだが・・・

一方で、ライバルのネスレ(マギーブイヨンブランドでうまみ調味料を販売している)は、正反対の手法をとっている。
現地の店(店といってもバザールで一人で経営されているようなものなのだが)一軒一軒を巡る味の素のような手法(いわゆるドブ板営業)ではなく、進出と同時に巨額の宣伝・販促費用を投入する空中戦法。どちらが効率的なのかを検証してもらいところだが、本作では味の素(の社員)を称賛するだけに終わっている。

グリーンベレーの首領?(黎明期から海外市場を開拓してきたベテラン)の人は現地を監督しに巡るのだが、その際、現地に派遣された日本人社員がどんなレストランに自分を連れて行くのかで現地への浸透度合いをはかっていた(高級レストランとかではなく、現地の人が日常的に利用するうまい店につれていけば合格)というのが面白かった。
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