蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

野ブタ。をプロデュース(TV)

2024年09月29日 | 映画の感想
野ブタ。をプロデュース(TV)

木皿泉さんのエッセイが好きで、出版されているものはたいてい読んでいるのだが、脚本した作品を見たことはほとんどなくて、出世作といわれる本作を見てみたいと思っていた。
長年通ったレンタルビデオ店が閉店すると聞いて、なぜか最後に本作4本を借りてみた。多分10年くらい誰も借りていなかったんじゃないかと思う。

東京下町の高校生の桐谷修二(亀梨和也)は、社交性抜群の人気者。学校一の美人でバスケ部のキャプテンのまり子(戸田恵梨香)が毎日弁当を作ってくれるという誰もがうらやむ存在だが、本人は虚しさを抱えている。
同じクラスの草野彰(山下智久)は企業オーナーの息子だが、跡を継がせようとする父と対立し、知り合いの豆腐屋に下宿していた。
転校生の小谷信子(堀北真希)は、クラスの坂東らにいじめられている。修二と彰は、面白半分に小谷を人気者に仕立てようとするが・・という話。

学校の先生などが演じるコメディタッチの部分をたくさん挿入してまぶしているものの、テーマは、アイデンティティの探索という重いもので、信子の最初の友達だった蒼井(柊瑠美)のサイコな正体は、けっこう迫力のある怖さだった。

亀梨和也と山下智久は、今の姿とはかけ離れた見かけで、20年近く前の風俗もあいまってか、有体にいうと山出しにみえる。
しかし、
8話あたりで、人気者だった修二がある事件をきっかけにクラス全員から無視されるあたりの複雑な心象を演じる姿は、一皮むけた?と短期間での成長を感じさせた。
とぼけたキャラだった彰も、信子への恋心が明らかになるころから、人格が確立?して魅力が増した。

キャスティングからして、最後に信子の美貌が花開くという筋に(普通のドラマなら)収束すると思うのだけど、修二や彰と違っていつまでたっても一皮向けなくてうつむいたまま、という意外性に満ちた?展開も木皿脚本ならでは、なんだろうか。っていうか、堀北さんおよび事務所とかがよく了承したもんだなあ。
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文にあたる

2024年09月29日 | 本の感想
文にあたる(牟田都子 亜紀書房)

著者は、司書をやっていたが販売業に転職、その後出版社所属の校正者になったあと、フリーの校正者になったそう。フリーの校正者なんてあるんだ、と初めて知った。

今どきは校正を経ないで出版される本もあるそうで、校正者業界?もなかなか厳しいらしい。そういえば大手出版社から出たものなのに誤字だらけで回収になった本とかあったような。

ジャンルごとに専門の校正者がいる場合もあるそうで、典型的なのはレシピ本。ちゃんと料理ができるのか検証したりするそうである。まあ、塩の分量とかで語字があったりしたら台無しになっちゃうもんね。

出版社などに属する校正者は、最初は校正そのものでなくて著者略歴など(こういうのを「付物」と業界では呼ぶらしい)を書くことから始まるとのこと。著者略歴って著者本人が書くものだと思ってた。

文学作品では、故意に文法的に正しくない表現を行う作家もいるそうで、校正者泣かせだという。
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じゃむパンの日

2024年09月29日 | 本の感想
じゃむパンの日(赤染晶子 PALM BOOKS)

著者は芥川賞受賞者で故人。京都生まれで大学は北海道、その後京都に戻って就職したらしい。それぞれの地における思い出を中心にしたエッセイなのだけど、内容がかなり文学的というかシュールで、ついていくのがけっこうしんどかった。

祖父と祖母の思い出話(苦労して内職?の縫製(ミシンかけ)で一家を支えて祖母の話が特によくて作品化してもよかったのではないかと思った。もしかして既に小説になっているのかもしれないが。。。未確認)が特によかっった。
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カラオケ行こ!(マンガ、映画)

2024年09月29日 | 映画の感想
カラオケ行こ!(マンガ、映画)

原作者(和山やま)を知ったのは「女の園の星」。絵柄と正反対?、かつ、今どき珍しい?ギャグだけ?で構成されたナンセンスな内容が、ほのかな懐かしさもあって素晴らしかった。寡作なので他の作品も全部読んだのだけど、本作は成田狂児のキャラが際立っていた印象があった。

その狂児に綾野剛はちょっとどうかな、と思ったのだが、マンガをそのまま3次元化したような出来栄えで感心した。行動は完全にギャグなのに、ヤクザとしての狂気や迫力がそこはかとなく漂っているのがいい。
さらに本作のキモであるカラオケ歌唱シーンも素晴らしい。

原作ではあまり描かれなかった岡聡実の家庭の様子の描写に相応の時間が割かれていて、母役の坂井真紀がよかった。最近、よく見かけるけど、なんというか若い頃よりキレイに見える。

聡実のもう一つの部活動は原作には全く登場しない映画オリジナルなんだけど、それだけに?練りに練られた?設定で聡実の不可思議さ?を浮き彫りにしていた(ビデオデッキの秘密もよかった)。その聡実は、原作のビビリの泣き虫とは反対のツンツンしたキャラなんだけど、クライマックスのカラオケシーンは同じように盛り上がっていた。
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愚か者の石

2024年09月29日 | 本の感想
愚か者の石(河﨑秋子 小学館)

明治時代、本人としてはあまり身をいれて活動した覚えがないものの政治犯として北海道の監獄で10年以上懲役となった瀬戸内巽を描く。監獄内で瀬戸内と仲がよかった山本大二郎は、石英の小さな石を隠し持ちとても大事にしていた。山本は脱獄し、恩赦により仮放免となった瀬戸内は、山本の過去をさぐるが・・・という話。

瀬戸内と山本が主人公格なのだけれど、キャラクターとして二人以上に魅力的なのが獄卒の中田。獄卒としての務めを忠実に果たし、毎日制服の手入れをして狭い官舎にも満足しているストイックさがかっこいい。瀬戸内と山本を普通の社会的生活になじめない人物として描くことで、中田の生真面目さを際立たせているようにも思えた。

小説としては、出所後に山本の行動の真相をさぐるあたりが読みどころなのだと思うが、明治時代の刑務所の、過酷なようでそれなりに官としての規律も働いていた様子を描いた前半の方が興味深く読めた。
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