蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

長い一日

2023年01月14日 | 本の感想
長い一日(滝口悠生 講談社)

著者らしき主人公と妻が8年住んだ借家は、老夫婦がかつて二世帯住宅として建てたもので、二三階を借りていた。大家の夫は長年鉄くず回収を仕事にしていたが最近引退した。
著者と妻は日当たりがよく大家との関係もいいその借家を気に入っていたが、引っ越すことにする・・・という話。

私小説みたいで、登場人物の多くが実在するみたい。ストーリー展開はなくて家探しエッセイみたいな感じなんだけど、なんてことない平凡な暮らしぶりや生活に対する考え方などになぜか共感できてしまう。
でも、年取った今読むから面白くかんじられるような気もする。若い頃に読んでいたらすぐに放り出していたかも。

実在するスーパー・ストアチェーンのオオゼキが絶賛されている。多分、著者は本当にオオゼキのファンなのだろうが、あまりに(品揃えや店員の接遇が)褒められているので、行ってみたくなった。
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すべての月、すべての年

2023年01月07日 | 本の感想
すべての月、すべての年(ルシア・ベルリン 講談社)

著者は2004年に亡くなった後、遺作が評価されてベストセラーになった。A Manual of cleaning womanが底本で、ボリュームの関係から前作の「掃除婦のための手引書」と2分冊になったそう。

翻訳者の岸本佐知子さんは、エッセイも大変面白い(エッセイの方は寡作なのが残念だが)。本作の訳者あとがきに書かれた本作の紹介や評価もまさに的を射た内容で、感想を書く気が失せてしまうほど。

表題作は、元教師のエロイーズがメキシコのリゾート地で漁師の親方セサルと知り合う話。漁師たちの素朴な生活ぶりの描写がいい。

「友人」は、元考古学者アナと元技師のサムの老夫婦と近所に住むロレッタの交流の話。老夫婦の暮らしぶりが素敵だ。

「笑ってみせてよ」は、空港で警官を暴行したとして裁判にかけられることになったカルロッタの親族と弁護士コーエンの話。カルロッタの親族たちはクセが強い人たちばかりだが、コーエンとだんだんと仲良くなっていくプロセスがいい。

「ミヒート」は、メキシコからオークランドへ夫を頼って来たアメリアと子供の話。夫は麻薬密輸で収監され、17歳のアメリアは親戚の家で暮らすが邪魔者扱いされる。アメリアと子供たちを救おうとする医者と看護助手との関わり具合が、つかず離れずで何ともいい感じなのだが、結末は珍しく後味が悪い。

短い文章で鮮やかなイメージを惹起できる力は前作同様で、数十ページの短編を読むだけで別世界へ連れて行かれたような感覚が味わえる。
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護られなかった者たちへ

2023年01月07日 | 映画の感想
護られなかった者たちへ(映画)
東北の福祉事務所の役人が連続して殺される事件を担当する笘篠(阿部寛)と蓮田(林遣都)は、放火事件で刑務所にいた利根(佐藤健)をマークする。利根は知り合いの老女:遠島けい(倍賞美津子)の生活保護申請をまぐって役所と対立した過去があり・・・という話。

おおよそ原作通りのストーリー。しかし犯人のターゲットになる人たちが、原作では一見いい人だが実はかなりの悪人という設定だったが、映画ではいずれも本当にいい人(なにしろキャストが永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆なので推して知るべし)なので、真犯人への共感が(原作に比べると)薄くなってしまったような・・・

これだけ豪華なキャスティングなので、もうちょっと盛り上げてもらいたかったかな。
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99.9刑事専門弁護士 THE MOVIE

2023年01月04日 | 映画の感想
99.9刑事専門弁護士THE MOVIE

斑目法律事務所で刑事事件に特化した弁護士の深山(松本潤)は、知り合い?の弁護士の南雲(西島秀俊)の養女エリの実父が15年前に起こしたとされた集団殺人事件の真相を探る。現地で地元の人の協力を得て事件の再現実験を繰り返すが・・という話。

テレビシリーズは見ていないので、独特のお約束に慣れていないせいか、前半はおふざけが過ぎるなあ・・・という印象だった。だんだん雰囲気に慣れてきた終盤は面白く見られたし、事件の種明かしもまあまあ意外性があった。

本筋と関係ないが、深山が実家?の居酒屋で料理を作ってふるまうシーンがなかなかよくて、調べてみると深山が食べ物のうんちくを傾けたり、料理したりするシーンがTVシリーズのウリの一つだったらしい。刑事弁護士とは何の関係もないから、作中にグルメ・料理情報を挿入するという一時期のブーム?に便乗したのだろうけど、TVシリーズもちょっと見てみようかな、と思った。
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チタン

2023年01月04日 | 映画の感想
チタン

アレクシア(アガト・ルセル)は父の車に同乗中に事故にあい、右のこめかみにチタンの部品?を埋め込まれる。そのせいか自動車と意思疎通?や性交?ができる。自動車ショーのコンパニオン?として出演していた後に絡んできた男を殺害し、身を隠すために10年前に失踪した消防署長の息子になりすまして署長と暮らすことになるが・・・という話。

なのだが、ストーリーにあまり意味はなくて監督の妄想か悪夢をそのまま画像にしたような映画。
各所で絶賛されているそうだし、映画評を読むと撮影や編集の技量はとても高いものだそうだ。
しかし、素人の私からすると、見ていて気分が悪くなるような内容でしかない。映画を見慣れた(あるいは見飽きるほど見ている)人からすると、そういう感情を引き起こせるからこそ、斬新で注目できるのかもしれないが。
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