蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

救いたくない命

2024年10月27日 | 本の感想
救いたくない命(中山祐次郎 新潮文庫)

都心の病院の外科医、ベテランの外科医剣崎と松島をめぐる短編集。「俺たちは神じゃない」シリーズ第2弾。

表題作は、手術中の患者が重大テロ事件の犯人と実体験ときの執刀医の心境を描く。

「午前4時の惜別」は高校時代の部活の顧問の先生を執刀するが、術後、合併症が発生してしまう。恩師が患者になった際の複雑な心境を描く。

「医学生、誕生」は松島が突如医者を死亡することにした患者をコーチ?する話。

「メスを擱いた男」は、前作からの続きで、飛び降り自殺者を救おうとして自分が重大な障がいをおってしまった医者の話。

「白昼の5分間」は、剣崎の病院のベテラン看護師の息子が急性の病気で即座に手術を強いられる話。手術シーンの迫力がすごい。

「患者名・剣崎啓介」は剣崎自身が虫垂炎にかかってしまう話。自らが手術を受けるとなると、簡単なものとわかっていても不安になる心理が面白い。

著者は現役の外科医で今もバリバリ手術をしているらしい。なので、ある程度自身の経験を素材にしていると思われる。本作では「患者名・・・」の心理描写が真に迫っている感じだったので著者もオペを受けたのかもしれない。
「白昼の5分間」は創作なのだろうか。急変した事態に焦る医者の心理や手術シーンの緊迫感は相当のものだったが、実話だとすると出来過ぎのような気がしてしまう。
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