蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

コードブレイカー

2025年01月14日 | 本の感想
コードブレイカー(ジェイソン・ファゴン みすず書房)

1916年、高校を出たばかりのエリザベスは、シカゴの図書館でシェイクスピアの研究をしようとしていた。そこに、富豪で(自分の趣味で研究所を運営していた)フェイビアンが現れて彼女をスカウト、研究所のあるリバーバンクに連れ去る。エリザベスはそこでシェイクスピア作品に仕込まれたフランシス・ベーコンの暗号を探すプロジェクトに従事する。彼女は暗号を読み解く類まれな才能を発揮しはじめ、やがて重要な外交・軍事暗号の解読の第一人者になる・・・というノンフィクション。

リバーバンクの研究所で知り合って結婚したウィリアム・フリードマンも暗号解読の達人だったが、本書によるとエリザベスの能力は彼を遙かにしのいでいたらしい。

機械や出始め?のチューリングマシン、あるいは人海戦術を用いることなく、彼女一人が紙とペンだけで暗号のキモ(解読のキー)を発見してきたことに驚く。たまたま解けたのではなくて、莫大な数の暗号を解いたし、重圧がかかり神経を使う仕事にもかかわらず、それを何十年も続けることができたというのもすごい。実際、夫のウィリアムは精神を病んでしまったらしい。

本書は、読み物としてのノンフィクションというよりは、学術的・資料的価値を追求している面が強く、本筋以外の部分が冗長で、全体的に読み進めにくいが、歴史に埋もれていた驚きの事実を発掘したのは素晴らしい業績だと思う。
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