春のお彼岸の時期に、秋のお彼岸のころ(9月20日ごろ)の写真で申し訳ありません。
ここは高村光太郎と智惠子の思い出の海、砂浜の長く続く九十九里浜です。
岸辺には光太郎の「千鳥と遊ぶ智惠子」詩碑が建っています。その面影を求めて静かな海を期待して行ったのですけれど…。
「ちい、ちい、ちい・・・」と啼く千鳥も勿論見当たらない…。
(上の写真はインターネットから引用)
この碑の背景が海。昭和9年、智恵子が精神を病み(統合失調症)、発病後この海岸付近に保養していた縁で、ここ東金の地に詩碑が建っています。光太郎の詩「千鳥と遊ぶ智恵子」の全文が光太郎自筆拡大で刻まれています。碑陰記は草野心平。
かつては完全に海岸の砂丘に建てられていましたが、その後、碑と海の間に自動車道が造られてしまい、そのころの雰囲気が伺われるかと思ったのでしたが、自動車道で海との一体感が壊れ、光太郎夫婦の面影を追いにくくなっていたのが残念でした。
この日は、パラグライダーや波乗りサーフィンなどで遊ぶ親子連れや若者たちでにぎやかでした。
●あどけない話(高村光太郎)
智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとうの空だといふ。
あどけない空の話である。