美しい方が逝ってしまわれた。みんなから憧れの人としての存在だった。涼やかな瞳で笑顔が似合うひとだった…中学時代の男の子たちは、ほのかな恋心を抱いていて、たぶんみんなの初恋の対象だったという。
その方はユリちゃん。彼女はまだ小学生のころ、ご両親を亡くし15歳上のお兄さんと近くにお住まいの叔母さんに見守られ大きくなられた。
私たちの恩師も彼女のお兄さんと同年齢の15歳年上。その恩師にまずお知らせの上、同級生の男子にもこの訃報を知らせたかった。「最期のお別れ」の機会をお知らせした方がよいだろうと思った…。しかし恩師は「ユリさんに淡い恋心をみんながもっていたようだよ…」と偲ばれ、別に知らせなくてもよいと判断なさったようだった。私はそれ以上、電話連絡をしなかった。
「可愛かったよ。ユリちゃんは、お正月に着物を着て、アヤちゃんとうちに遊びにきたんだ。一日遊んで帰るときには着物が着崩れてしまっていて、お袋に着付けなおしてもらったりね…。家庭が欲しかったんだね、ワタシより早く結婚したんだよ!」
もしか、センセイが一番のユリちゃんのファンだったのかと、このとき初めて判った気がした。娘さんばかり3人もうけて幸せなお顔に会ったことを思い出す。そしてママさんバレーボールを楽しんで健康そのものだったのに…。
彼女は肺にカビが入って肺胞をつぶしてしまう怖い病気に取り付かれたのだ。息がしづらくて苦しんだと言う。最期はヒマラヤの頂上で息をしているような…肺胞がカビで充満してしまい真っ黒だったとか。それでも亡くなる前日は、家に帰る練習にリハビリをしなきゃ!と、ベッドに自力で座ったとか…。ものの数秒しか座っていられないほどの状態だったと、ご主人が無念そうに語られた。
いよいよ柩が閉じられる時、小学生低学年くらいの男のお孫さんが「おばあちゃん、ありがとう!」、もう少し大きい男の子が「おばあちゃん、さようなら」と大きな声で泣きながらお別れを言い、こらえ切れずに泣き続けた。
なんと感受性の豊かな、素直に表現の出来るいい子なんだろうと貰い泣きをしてしまった。