医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

頻回の胸部レントゲン写真によるスクリーニングは逆に肺ガン発症率を増加させる

2005年11月02日 | 
健康診断では、胸部レントゲン写真は全員に必ず行われる項目の1つです。これは結核などの感染症を見つけ出す目的もありますが、主に肺ガンを見つけ出す目的で行われています。しかしそれが逆の結果をもたらしているという驚くべき報告です。
Thorax. 2003;58:784.(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この報告もメタアナリシスといって過去の7つの論文をまとめたものです。合計245,610人が3年から24年調査されています。それぞれ胸部レントゲン写真が1~2年ごとに施行されている群と4~6カ月ごとに施行されている群に分けられています。

結果ですが、肺ガンの死亡率は胸部レントゲン写真が4~6カ月ごとに施行されている群では1~2年ごとに施行されている群に比較して1.11倍、すなわち11%上昇していました(P=0.05)。つまり、頻回の胸部レントゲン写真によるスクリーニングは逆に肺ガンの発症を増やしてしまっていました。

胸部レントゲン写真が1年ごとに施行されている群と1年ごとプラス4カ月ごとの痰の検査を施行する群の比較も行われましたが、死亡率に違いは認められませんでした(P=0.11)。しかし、肺ガンの5年生存率に関して、すなわち5年までの死亡率は1年ごとプラス4カ月ごとの痰の検査を施行する群が有意に改善していました0.83倍、P=0.0003)。

この論文では、「頻回の胸部レントゲン写真の施行は肺ガンのスクリーニングに有害である。この教訓をふまえて今後新しい検査法(たとえばCT)が登場するならば、その前に有用性を十分に検討すべきだ」と結論づけています。

この報告には、無作為試験でないものも含まれています。例えば、群分けの時にヘビースモーカーだから頻回に検査がされていたという事などを補正する無作為化が行われていない試験も含まれています。この点は著者も指摘していますが、それを考慮しても、健康診断で胸部レントゲン写真を頻回に撮っても肺ガンの死亡率は改善できない事実を重く受け止めるべきだと思います。

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