医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

もう一つのブレイキング・ニュース

2005年11月18日 | 循環器
もう一つ日本からEPA製剤に関する大規模臨床試験の結果がありました。EPA製剤とはイコサペント酸エチルとよばれ、イワシのエキスと同じ成分です。この調査は前向き無作為化非盲検化比較試験で、追跡期間は最大5年間です。

総計18,645例の患者さんが無作為にEPA+スタチン群9,326例と,スタチン単独(対照)群9,319例に割り付けられました。全例にプラバスタチン10~20mg/日またはシンバスタチン5~10mg/日を投与し、EPA群にはそれに加え1,800mg/日(食後600mg×3回/日)のEPA製剤を併用投与しました。

突然心臓死、致死性および非致死性心筋梗塞、虚血性イベントによる入院を含む不安定狭心症、心血管再建術(ステント,冠動脈バイパス術,風船治療)の発生率、心血管死亡率、総死亡率が5年間調査されました。

登録症例のうち、1次予防(今まで虚血性心疾患を発症したことがなく最初の発症を予防するという意味)の患者は14,981例で,2次予防(過去に虚血性心疾患を発症しており次の発症を予防するという意味)の患者は3,664例でした。

結果は、動脈硬化性心臓病の発症率はEPA群で2.8%、対照群で3.5%と、EPA群が対照群に比べて有意に低く(P=0.011)(差がたったの0.7%です)、非致死性冠動脈イベント発生率はEPA群で2.6%、対照群で3.2%とEPA群が対照群に比べて有意に低かったそうです(P=0.015)。2次予防の患者においてはEPA群では対照群に比べて主要冠動脈イベントの発生が有意に抑制されましたが(P=0.048)1 次予防の患者では有意差は認められなかったそうです(イベント発生率:1.4%対1.7%,P=0.132)。総死亡については,両群間に大きな差は見られませんでした。

結論では「EPAとスタチンを併用することで,主要冠動脈イベントの発生を抑制することが明らかとなった」と述べられていますが、NNTがあまりにも高いから、恣意的に表に出していません。ですから私が計算してみました。非致死性の動脈硬化性心臓病の発症で167、非致死性狭心症の発生で200です。つまり死なない狭心症を1人予防するのに200人がこの薬を飲まされるのです。しかも初めての発病を予防する1次予防には全く効果がないし、突然死、致死性心筋梗塞、冠動脈疾患による死亡、冠動脈バイパス術や風船治療になってしまう率、全ての原因による死亡のいずれにも効果がないのです。

以下は「お薬110番」に載っているEPA製剤の効能です。
「血液中の中性脂肪を減らす作用があります。このお薬で脂肪分を低下させていれば、将来起こるかもしれない心筋梗塞や脳梗塞の予防効果が期待できます」
そもそも、スタチンの動脈硬化に対する有用性が確立されたあとで、それに併用してもさらなる効果はほとんど期待できないのに、この薬が売られていていいのでしょうか。

この薬の600mgは現在103.7円(1日分311.1円)ですから、5年間で、死なない狭心症を1人予防するのに103.7 x 3 x 365日 x 5年 x 200人= 113,551,500円。
なんと約1億1千万円かかるのです。

スタチンの動脈硬化に対する有用性が確立されている現在、二次予防にスタチンを投与せずにEPAだけを投与するシチュエーションはなくなったのですから、このような宝くじのような薬をスタチンに併用して処方するのはどうかと思います。

薬の商品名をあげておきました、みなさんご自分でチェックしてみて下さい。

先発品「エパデール」
後発品「アテロバン」「アルファトン」「EPAエチル」「イコサエート」「イコペント」「イワペント」「エナゼック」「エパキャップソフト」「エパデールS」「エパフィール」「エパラ」「エパンド」「エメラドール」「エルモダン」「クレスエパ」「シーレーン」「シスレコン」「ソルミラン」「ナサチーム」「ノンソル」「パージェリー」「ビオエパン」「ピナデール」「ペオナール」「メタパス」「メルブラール」「ヤトリップ」「リポネス」「リリット」

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コメント (5)
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