医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

日本のブレイキング・ニュースで思うこと

2006年03月27日 | 循環器
一昨日は、狭心症でも「重症でない」群であれば、風船治療とステント治療をせず薬だけ飲んで治療する群は、その後3年半の死亡率や心筋梗塞の発症率は風船治療とステント治療をする群と変わらないという事をお伝えしました。具体的な数字を見て感じたことがあるので、考察してみました。

死亡率は、3年半の観察期間で薬物のみの治療群で190人中15人(7.9%)、風船治療・ステント治療群で192人中11人(5.7%)です。

このデータを見て、ある医師が「重症でない」狭心症患者さんを薬物のみで経過をみている間に、運悪くこの患者さんは7.9%の確率の中に入ってしまい、死亡してしまいました。そこでこの患者さんの家族があの時風船治療をしてくれていたら死ななかったとして、医師を訴えたとします。もちろん裁判官がこの論文の内容を知っていれば無罪になるのでしょうが、そうなる保証もないし、裁判所に何度も足を運ぶ時間的浪費は計り知れないものがあります。

ですから、たとえ結果が同じであっても、医師は訴えられにくい方法をとらざるを得ない時代になってくると思うのです。これは最近あった、胎盤癒着による出血で患者さんが死亡したため治療にあたった医師が逮捕された事件とも通じる事があって、どんなに手を尽くしていても一定の確率で起きる母体死亡で医師が逮捕されるのであれば、産科医はこの世からいなくなるでしょう。

またこの件では、死体検案を24時間以内に警察に届けなかった事も逮捕理由の1つに挙げられていますが、どんなに手を尽くしていても一定の確率で起きる死亡を届けないで逮捕されるなら、風船治療をしないで薬物治療していて7.9%の確率で死亡された患者さんの死も24時間以内に警察に届けなければいけない事になります。

患者さん側からみて、手を尽くしたように思えるのは「薬物治療」、「風船治療」のどちらでしょうか。もちろん「風船治療」でしょう。そうすると、死亡率が同じ場合でも「風船治療」が増えてしまうのは仕方がないこととも思えます。

それでは重要な事はなんでしょうか。それは、こういう論文の結果をできるだけ多くの患者さんや裁判官に知ってもらうことではないでしょうか。


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