医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心房細動そのものを予防した方がいいのか、心房細動でもいいから血液の塊を予防した方がいいのか

2006年05月04日 | 循環器
前回お伝えしたように心房細動という不整脈は致死的な不整脈ではありませんが、心臓内で血液の塊(血栓)が生じやすくなり、その結果脳梗塞になりやすくなります。65歳以上の方の約20人に1人は心房細動であるといわれています。

これまでは心房細動も不整脈であるから、薬を使ってできるだけ予防した方がいいという意見が大半でしたが、明確な根拠は示されていませんでした。そこで、心房細動そのものを予防した方がいいのか、心房細動でもいいから血液の塊が形成されるのを予防した方がいいのかを調べるAFFIRMという研究がなされました。

A comparison of rate control and rhythm control in patients with atrial fibrillation.
New England Journal of Medicine. 2002;347:1825.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

対象は一過性の心房細動の患者さん4,060人(平均年齢70歳)で、抗不整脈薬の投与や電気的除細動を行いあくまでも心房細動を治療・予防する群と、心房細動のままでワーファリンという薬によって心臓内で血液の塊が形成されるのを予防する群にわけられ、死亡率について5年間調査されました。ワーファリンは心房細動を治療・予防する群でも使っていいことにしました。

全体の70.8%に高血圧症があり、38.2%に狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性心疾患がありました。

心房細動を治療・予防する群の5年間の死亡者数は356人(23.8%)、血液の塊が形成されるのを予防する群では310人(21.3%)で両群に違いは認められませんでした(p=0.08)。

心房細動を治療・予防する群では血液の塊が形成されるのを予防する群と比較して、入院者数が多く、抗不整脈薬による副作用(心不全)が多くなりました。また、ワーファリンの内服をやめてしまった事により脳梗塞の発症が増えました。

これまで心房細動は抗不整脈薬を使ってできるだけ予防した方がいいと考えられていたのですが、そこまで躍起にならなくても、心房細動のままで血液の塊の形成を予防する療法と予後が変わらないことがわかったのです。

ただし、この研究では心房細動を治療・予防する群では、アンカロンなどという副作用として比較的心不全が発生しやすい強い薬が使われ、そのために死亡率が高くなったとも解釈されています。日本ではアンカロンという薬は心房細動の治療にはあまり使われていないので、この研究の結果をそのまま日本にあてはめることは難しいようです。


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