@「リドルストーリー」(結末を読者の想像に委ねる)短編小説に託した可南子の父は、世に遺したのは謎を秘めた真実だった。密室事件にありがちな当事者しか知らない真実を娘にも告白せず半永久に残る小説に託したのだ。読者の想像、予測に委ねた作品は「消化不良」となりがちで、「後味」が悪い。だが、今後「我が人生」としてそういった内容も遺書をネット上に残す人も増えてくる気がする。それは今までずっと秘めていたことを告白し、気持ちを軽くして逝きたい人が増えると感じる。
『追想五断章』米澤穂信
「概要」5つのリドルストーリーに秘められた物語
古書店アルバイトの芳光は、依頼を受け5つのリドルストーリーを探し始める。実はその著者は生前「アントワープの銃声」事件の被疑者だったことが明らかになり……
ー「リドルストーリー」とは「読者に委ねて結末を書かない小説」
ー夫婦と幼い娘3人が家族が旅に出る。ある晩妻が自殺を図り、夫がその殺人容疑で逮捕される。夫は紳士で金持ち、だが酒と女に酔いしれていた。妻は貞淑で高潔、女優であった。 既に夫も癌で亡くなり、成熟した一人娘可南子が父の幻の小説5篇があると知り、探そうと古書店のアルバイト芳光に依頼する。いずれもその5点がリドルストーリーであり一行の要約文があることは知っていた。
ー芳光は可能性のある古い人脈などから4編を探し出し最後の5編目が病院の看護婦に委ねていた。それらを繋げると「母の死亡が自殺だったのか他殺だったのか」が読みとれ、それを反故にしようとしていた存在が娘だった。