@男の魅力と女の魅力、見せる側と見せられる側、至って違うのは当たり前。誰もが裸になれば同じ男と女になる、そんな人間の精神と肉体を鋭く視た小説だ。男と女はどうあるべきか、恋人同士の時、夫婦となった時、互いが老いを感じる時、など 人の魅力はいつも違う、見つけ感じるのは自分だ。文中の空爆後生き残った女の言葉「私は過去よりも未来、いや、現実があるだけなのだ」と生きている今こそ本当の自分を試す事ができるのだと悟った、に深い印象を持った。
『白痴』坂口安吾
白痴の女と火炎の中をのがれ、「生きるための、明日の希望がないから」女を捨てていくはりあいもなく、ただ今朝も太陽の光がそそぐだろうかと考える。戦後の混乱と頽廃の世相にさまよう人々の心に強く訴えかけた表題作など、自嘲的なアウトローの生活をくりひろげながら、「堕落論」の主張を作品化し、観念的私小説を創造してデカダン派と称される著者の代表作7編を収める
「いずこへ」男と女、飲み屋の女はいつもだでから寝泊まりしているが、若い男の亭主持ち。亭主は気にせず金を貰えば消え去る。ある日、女が自分の部屋に訪ねてくるようになり掃除、料理などして行く事があり好きでも無いのに何処かに一緒に住みたいと言い張る。性的欲求もないが
「白痴」ある日白痴な女が自分の部屋に忍び込み、対話もできず、怯えて押し入れに隠れていた。夜になっても怯えるだけで帰るとも無く一夜を過ごす。一人の若い女、でも白痴を泊める事で躊躇する。やがて東京の空襲で周りが焼け野原になるが、かろうじて何故か白痴の女を庇い一緒に逃げる。
ー時は終戦間近の男と女・露天商の醜い年老いた女、白痴で対話ができない若い女、芸者上がりの人妻娼婦、貞操の概念がないマダム女、周りが火の海となった空襲で好きな男に身を捧げ熱風地獄から生き延びた女郎、何も情欲、肉欲が絡む展開となる
ー「女の必要があったら金で別れることのできる女を作れ」アドルフの一説
ー「己の欲するものを捧げることによって、真実の自足に至ること。己を失うことによって、己を見出すこと」
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