昨年10月、紀伊國屋ホールにお芝居を見に行った時
エレベーターホールに紹介ポップ付きで
平積みされていた『傲慢と善良』
以前読んで面白かった『かがみの孤城』の作者
辻村深月さんの名前が目に留まって買いました。
そういえばあれ読んでなかった。
やっと手に取って。。。
これはそうとう腰を据えて読まないと、な内容だったので
なかなか手がでなかった訳がわかったような気がしました(^^;
自分自身がこの女性に近いものがありました。
自分がぼやぼやした性格だったせいかもしれないけど
母と年の離れた姉から「おまえはこう」「おまえはこう」
って始終行動に口出しされるので
彼らの言う「正解」に沿って生きなきゃと頑張っていた。
小学生のころ
「そゆるちゃんってさ、いつも『うちのお母さんがこう言ってる』
『うちのお姉ちゃんはこう言ってる』ってばっかり言うよね」
って指摘されたのを覚えてるくらい「自分の意見」なんてなくて
母か姉のお墨付きがないと何も言えなかった。
主人公の気持ちわかりすぎる。。。(辛。。。
ひとつ違うのは好きな人ができて
23歳という若さで結婚したこと。
「婚活」みたいなトレンドがなかったぶん
まだましだったかも、と思いました。
だいぶそれぞれの選択が尊重される時代になったというものの
いまでも「結婚していない」人に対する
周囲からの「しないの?」という圧があることは想像できるし
親からはもっと率直に「してほしい」って言われることは多く
ましてや親の基準で生きてきたような、特に女性には
それは重くのしかかる命題であることは間違いない。
まあ、早くに結婚した自分も、結局「旦那さん」という
親とは別の行動の基準を得ただけだったと
結婚後10年くらいして気づいて
今更の「自分探し」を何年もすることになった訳ですが。
しかし、めちゃくちゃ辛いこのお話にも
辻村深月さんはものすごいエンディングを用意してくれてます。
読んでいて思わず「うわぁ!」って声が出ました。
そして涙が溢れました。
『かがみの孤城』では学校になじめない子供たちに
「こんなにわかってくれる人がいる」って
救いになるだろうなって思いましたが
『傲慢と善良』では私のように
「自分」という感覚を見失っている人や
「結婚」という言葉の呪縛に苦しんでいる人の
救いになるだろうと思いました。
誰かのことを心配することを思いやりだと思ってる人。
それは自分が安心したいだけで「エゴ」ですよ。
本当の愛は「その人は大丈夫」と信じてあげること。
ほんとそれに尽きる。
おまけ
文庫発売記念で紀伊國屋書店で買うと
レシートに直筆メッセージとサインが印字される
サービスがありました。貴重。