古文書を読もう!「水前寺古文書の会」は熊本新老人の会のサークルとして開設、『東海道中膝栗毛』など版本を読んでいます。

これから古文書に挑戦したい方のための読み合わせ会です。また独学希望の方にはメール会員制度もあります。初心者向け教室です。

武蔵野の尾花が末にかかる白雲  膝栗毛発端1

2016-01-17 17:45:29 | 膝栗毛発端

  武蔵野の尾花がすゑにかゝる白雲と詠しハむかしむかし、浦の苫屋、鴫立つ沢の夕暮に

 愛て仲之町の夕景気をしらざる時のことなりし・・・

 

   有名な冒頭の文章ですが、調べてみたらこれは続古今集にある和歌でした。

 武蔵野は月の入るべき峰もなし尾花がすゑにかゝる白雲  大納言道方

 また、「浦の苫屋」、「鴫立つ沢」と書いていますが、これは言うまでもなく三夕の和歌の終語を引

用して、昔の人は秋の夕暮れは寂しい趣に満ちていると言ったが、同じ武蔵野であっても、今の江

戸は吉原仲之町の夕景色なんぞをみれば管弦さんざめく酔客の衢であり、新古今時代の趣とはま

るで別世界のようですね、と言っているのです。そして一九はそれを肯定しています。ちょうどわた

したち世代が経済の高度成長に酔っていた時代相とそっくり重なります。

 栃面屋弥次郎兵衛というこの物語の主人公の名前ですが、栃面屋とは商家の屋号だろうぐらい

に思っていたのが、なかなかそう単純でないと書いた本がありました。栃面棒を振るという詞があ

ように「トチフル」という動詞から出た語で慌て者、粗忽者、ぶらぶらしている者の謂だそうで、勿

褒め言葉ではない。

 弥次郎兵衛(ヤジロベエ)というのはそういう名の玩具があり、落後には弥次郎という大ホラ吹き

の噺があります。それらの要素(皮肉・滑稽・当てこすり等)を盛り込んで命名していると知ったとき

に一九の用意の深さをしりました。

 


『東海道中膝栗毛・発端』を読み始めました。

2016-01-17 12:25:04 | 膝栗毛発端

  いよいよ今月から十返舎一九。経歴などをウイキ情報から引用。それによると一九は駿府の町

奉行所同心の子として生まれたらしいです。同心と聞いてすぐに思い浮かぶのはテレビの時代劇な

んかで「八丁堀のダンナ・・」などと半ば揶揄的に呼ばれているあの奉行所の役人のことですが、一

九はそういう家に生まれています。この時代に才能を発揮するには侍社会は窮屈であったのでしょ

うか、やがて一九は版元である蔦屋重三郎方の居候となって戯作者の道へ。浄瑠璃作家、黄表紙

作家などの修業を経た後いろいろいろ苦労もあったようですが37才の時に出した「膝栗毛」が大

ヒット、一躍流行作家になります。

「版元の者が身辺にたえずまとわりついて原稿が仕上がるのを待って持ち帰っていた」といゝますか

らすごい人気作家であったことが分かりますが、その背景には庶民レベルの購買力の向上、就中

寺子屋などの普及による識字率向上に負うところが多かったと言えるでしょう。寺子屋の文字教育

中心は「変体カナ」と「崩し文字」でしたから現代人が「古文書教室」で勉強している内容と同じも

です。ですから、われわれは江戸時代の寺子屋のおさらいをしているということになります。