今回から書翰の文例に入ります。先ずは年賀の挨拶状
新春之御吉慶目
出度申納候先以其
御地御家内様御揃
被成御越陽奉恐寿候
次ニ当方無異儀加年仕候
新春のご吉慶めでたく申し納め候 先ず以てその御地御家内様御揃い御越陽なされ 恐寿奉り候 次に当方異儀なく加年仕候
※ 越陽という語は辞書にありませんが、一陽来復の陽と解釈して新年を迎える義と理解しました。
加年仕候乍憚御安意
可被下候右年頭之御
祝詞申上度如此ニ
御座候 猶期永日之
時候 恐惶謹言
同返事
加年仕候憚り乍ら御安意下さるべく候 右年頭之御祝詞申し上げたく此如くに御座候 猶永日の時を期し候 恐惶謹言
※ 永日 春の日の永いこと。 春になって日が永くなったらお会いしましょうとの意。
華翰忝拝読仕候如仰
春陽之御吉兆何方も
御用意目出度申籠候
弥御清栄御迎陽被
成候由珍賀之至ニ奉
存候右御祝詞申上度
華翰忝く拝読仕候 仰のごとく春陽の御吉兆 何方も御用意めでたく申し籠め候 いよいよ御清栄御迎陽なされ候由 珍賀の至りに存じ奉り候 右御祝詞申し上げたく
且御礼旁貴酬如此ニ
御座候猶永陽万
喜可申上候恐惶謹言
初午之文
打続天気快晴殊ニ
初午当日至極穏ニ而
且つ御礼かたがた貴酬此如くに御座候 猶永陽万喜申し上ぐべく候 恐惶謹言
初午の文 打ち続く天気快晴殊に 初午当日至極穏やかにて