写生自在4
小田原の傘焼き祭り
投げし傘宙に開きて燃え上り 迦 南
海風に傘火の焔ちぎれ飛び 〃
𠑊として舎の高張や傘を焼く 〃
火となりてしばし美し傘の骨 〃
上記四句を読んだとき、傘を燃やしている場面を詠んだ句であることは理解
したものの、何のために傘を焼くのだろう、という疑問が解けぬままずっと放
置していたのですが、ある偶然から小田原市に傘焼き祭りというのが行わ
れていることを知り、これだと思い当たった次第です。
小田原市では毎年5月20日ごろに、曽我兄弟が父の仇討ちに行く際に傘
を燃やして松明代わりとした故事にちなんだお祭りをやっています。それが
傘焼き祭りなのです。
迦南がこの祭りを見物したのは昭和17年のことです。よほど印象深かった
のでしょうね、力の籠もった写生句を残しています。
この四句よくよく味わってみると表現に弛みというものがなく、無駄な言葉が
一字もなく殆ど完璧ですね。なかなかこうは詠めないものです。
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