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主戦場を変えたお蕎麦屋さんの話...

2012年03月15日 | 出来事・エピソード



こんにちは、助ネコサポートです。

みなさんは、ご褒美ランチ、なんてすることはございますか?
たまにちょっとだけ予算オーバーになるけど、奮発して食べに行くお店。

私のお気に入りは平塚駅から少し歩いたところの「蕎麦懐石」のお店でした。
きっと夜の宴会がメインなのでしょうが、ランチでも丁寧な仕事ぶりが感じられて、心も癒されるお店でした。

ところが10ヶ月ほど前、そのお店が郊外へ移転することになったのです。
伊豆や箱根帰りの車が通る海沿いの国道で、街の人たちからは、ちょっと行きにくいところでした。
古いお馴染みさんは、離れてしまうんじゃないかな。。と思いました。


移転して間もなく葉書をもらっていたので、週末に行って見ましたが、お客様はまばらでした。
メニューは、街で出していたときより、単価を少し下げていました。
フランスから空輸で取り寄せる最上級の鴨肉で作る鴨せいろは、肉の量を半分にして、値段を抑えていました。
私はお店の繁盛を祈りつつ、「もう駅から遠くなったし、なかなか来れないなあ。。」店を後にしたのです。


それから半年以上経った先日の週末、ふと思い出して、再びそのお店に行って見ました。
すると、驚いたことに、人が沢山並んでいるのです。
家族連れやら、年配のお客さんやら、観光バスの団体さんやら、バイク族のお兄さんやらで大賑わいでした。

これにはびっくりしましたが、メニューを見て思わず、「あっ!」と声が出てしまったのです。

そのお店は、もう「お蕎麦屋さん」ではなくなっていたのでした!

そして、すぐに気がつきました。
メニュー構成や価格が、隣町の有名な繁盛店Aさんによく似ているのです。

その有名店Aさんは、網元料理ということで、新鮮な海の幸を豪快に出すのが評判で
わざわざ、車に乗って、遠いところから食べに来るようなお店でした。

そうか、A店と、同じ戦場に移ったのか。。!!、と。

確かに、蕎麦をメインに置かずに、新鮮な海の幸で勝負していました。

湘南地区では名物が「しらす」なのですが、A店にもあった看板メニューの「しらす御前」が、
ここにも同じ価格帯であったのです。

せっかくなので、それをオーダーしてみました。

正直なところ、それまでしらす三昧しても結局、「名物にうまいものなし」だよねえ。。と思っていたのですが、
ここのお店の「しらす御前」には、うなってしまいました。

もともと懐石の腕のいい板前さんが作るので、芸と言うか、完成度が違うのです。

特に、しらすのてんぷらは、今まではどこで食べても「???」で、あまりおいしいと思ったことがないのですが、

ここのしらすのてんぷらは、どうやったらこんなかき揚げが作れるのだろう!!と、感嘆するような仕上がりのものでした。

スコーンのような形で、無数の星の砂からできているような繊細な見た目です。

食べるとふんわりサクッと甘い香りがします。

そして、ご飯のかわりは、「しらす蕎麦」というしらすを練りこんだらしい蕎麦で、ほんのりと磯の風味がして、更級の上品なそば粉を引き立てていました。


お店の人に聞きましたら、「箱根で山の幸を楽しんだ観光客の皆さんが、ここで海の幸を召し上がって帰られる」とのことでした。

「今日は団体さんも入っていて、お待たせしてしまって、申し訳ありませんでした」と、街中のお店のころのままの感じのいい接客と、

新鮮な海の幸を、その鮮度だけに頼らず、丁寧な料理で、仕上げて魅せて、食べさせる。

お客様は、観光客なので、けっこうお財布の紐も、ゆるむでしょう。


「ああそうか、このお店は、これがやりたかったのだな。。」とうなづきながら、

「主戦場を変えて、成功でしたねぇ。。」とつぶやき、お店を出たのでした。






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