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9月10日は新聞休刊日

2018-09-10 05:43:03 | 社説を読む
9月10日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを紹介します。

毎日新聞
・ 詩人、童話作家の宮沢賢治が岩手県で生まれたのは1896年8月。東北沿岸で2万人を超える死者・行方不明者を出した明治三陸大津波はその2カ月前に発生した。生まれた直後には、岩手・秋田に甚大な被害をもたらした陸羽(りくう)地震が起きている

▲賢治は大災害の時代に生きた。それに加え、冷害に苦しむ農村の現実を目にして「雨ニモマケズ」を作る。この詩は、東日本大震災の被災地に駆け付けたたくさんのボランティアが胸に刻んだという。被災者のために少しでも力になりたい。その思いが詩と重なる

▲同じ気持ちで、地震の被害に遭った北海道へと向かうボランティアが増えていくだろう。北海道もこれまで冷害などの自然災害に苦しみ続けた土地である

▲賢治は、教師をしていた花巻農学校の修学旅行で北海道を訪れ、各地に足跡を残している。今回被災した旧穂別(ほべつ)村も、かつて村長が賢治にならい、イーハトーブ(理想郷)のまちづくりを目指した縁がある。賢治がいたら、胸を締め付けられたことだろう

▲平成が終わろうとする時に起きた北海道の地震。思い出すのは、平成の初期にあった阪神大震災だ。「ボランティア元年」といわれた。作家の柳田邦男さんは著書で「人々と社会に『新しい価値観』の共有を呼びかける」動きと書いた。賢治が後世に託したものなのかもしれない

▲きょうも懸命の救出活動と復旧作業が続く。人への思いが人を現場へと突き動かす。「病気ノコドモ」や「ツカレタ母」が支援を待っている。

日本経済新聞
・ 根津の清水の下から駒下駄(こまげた)の音高くカランコロンカランコロンと……。ごぞんじ「怪談牡丹灯籠」の名調子である。猛暑はさすがにやわらいだとはいえ、なお暑苦しい夜もある。怪談噺(ばなし)でゾッとするのは涼をとる手立てとしては粋だろう。熱中症対策にはならなくても。

▼三遊亭円朝が「牡丹灯籠」を世に出したのは江戸時代の終わりごろである。明治のはじめに速記から活字化されたのが今に伝わっているのだが、21世紀の日本人にもわかりやすい語り口には感嘆する。実際、日本語による近代的な小説のさきがけとされる「浮雲」を書いた際、二葉亭四迷は円朝の落語を参考にしたそうだ。

▼「牡丹灯籠」をはじめ円朝が生み出した新作落語は数多いが、その旺盛な創作力の背景を探ると、なかなか切ない事情もうかがえる。師匠の二代目・円生が、若くして真打ちになった円朝の人気をねたんで、しばしば弟子の演目を先取りしたのである。そこで、師匠が先取りしようのないオリジナルの噺を披露していった。

▼結果として円生は円朝の才能が花開くのを助けたようにもみえる。だがそれは、のちに「不世出の名人」とたたえられた円朝だからこそだろう。陰湿ないじめや不条理なパワハラは、いまもあとを絶たない。声を上げるほどの勇気のない人には、耐え忍んで暑苦しい思いを倍加させるよりは怪談噺で涼を、とお薦めしたい。

産経新聞
・ 銀行マンは取引先の会社を訪ねると3つの点に注意する。トイレ、廊下、予定表である。社員にやる気のない会社はトイレが汚い。商品や伝票は廊下に山と積まれ、予定表には雑なスケジュールしか書かれていない。

 ▼社員の振る舞いは、業績を映す鏡なのだという(池井戸潤、櫻沢健著『「半沢直樹」で経済がわかる!』)。いかなる取引も疑ってかかるのが銀行業界の基本とされ、これを「健全なる猜疑心(さいぎしん)」と呼ぶらしい。それにしても借り手の信用を測る物差しがトイレとは。

 ▼逆はどうか。この銀行のお手洗いをのぞいてみたいものである。低金利時代を乗り切るためには借り手の涙もいとわない。そんな経営がまかり通っていたことに驚く。シェアハウス投資をめぐるスルガ銀行の不正融資で、第三者委員会は「組織的な不正」と断じた。

 ▼シェアハウスの運営会社と手を結び、顧客に自己資金があると見せかけた改竄(かいざん)書類は数百件にのぼる。無担保のずさんな融資や、営業成績の悪い行員を上司がなじるパワハラもあったという。注意を払うのが融資相手の信頼度ではなく、上司の顔色とは言葉もない。

 ▼「自己資金ゼロ」の怪しい文句で始まった儲(もう)け話ゆえ、借り手の落ち度も問われよう。十分な元手もなしに過剰な融資を受けるリスク、うまい話には裏があるという世間の通り相場に敏感であってほしかった。返済に窮したオーナーも多く、成り行きが気にかかる。

 ▼筋の悪い金融業者も顔色を失う不正の構図である。刑事責任を問われてもやむなしの騒動は、やがて「倍返し」以上のしっぺ返しを受けよう。創業家出身の会長らが辞任したところで、信用を測る物差しの汚れは簡単に消えるまい。洗えば落ちるトイレの汚れとは、わけが違う。

中日新聞
・ テニスの全米オープンで錦織・ジョコビッチ戦をテレビ観戦していて、松本大洋さんの漫画『ピンポン』のある場面を思い出した。それにしてもジョコビッチが強い。ああ、また、錦織がブレークされた

▼漫画の中で、ライバルの選手が試合に負けた主人公にこうささやく。「お前にひとついい事を教えてやんよ。ペコ。絶対に負けない唯一の方法さ」。本当にそんな方法があるのなら、誰だって知りたい。今の錦織だって。どんなに強烈なフォアハンドを決めても、ノバクは打ち返してくる。もう1セットを失ったか

▼絶対に負けない唯一の方法とはなにか。漫画の男が教える。それは、「勝つ事だ。ひひ…」。それでもそれは真実。走れ、錦織

▼ゲームセット。またしても旧ユーゴ出身の元世界一位にはじき飛ばされたか。これで十四連敗。通算成績はジョコビッチの十五勝に対して、錦織二勝。なんと高く険しい山なのか

▼なかなか勝てぬ相手に悩んだ選手を知っている。二〇一〇年までの通算成績は相手が十六勝で自分は七勝。が、挑み続けた結果、やがては通算成績で追いつき追い抜くようになる。挑み続けた選手とは、ラファエル・ナダルに対するジョコビッチである

▼コートを引き揚げる錦織。さすがにややうつむいていた。さあ顔をあげてほしい。挑み続けるしかない。それが「勝つ事」に近づくための唯一の方法。

※ コラムはテーマがあとから出てくる場合があります。

 宮沢賢治から北海道地震、三遊亭円朝からパワハラ が例です。

その一方で、テーマに近いものから入るものもあります。

トイレ、廊下、予定表からスルガ銀行、漫画『ピンポン』から錦織

文章を磨くには、コラムを書いてみること。
これが早道です。

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