知識基盤社会とは?
現行の学習指導要領の基本的な考え方はで、次のように説明されています。
言語活動の充実に関する指導事例集【中学校版】
第1章 言語活動の充実に関する基本的な考え方 から引用します。
第1章 言語活動の充実に関する基本的な考え方
(1)学習指導要領における言語活動の充実
ア 新しい学習指導要領の基本的な考え方
知識基盤社会の到来や,グローバル化の進展など急速に社会が変化する中,次代を担う子どもたちには,幅広い知識と柔軟な思考力に基づいて判断することや,他者と切磋琢磨しつつ異なる文化や歴史に立脚する人々との共存を図ることなど,変化に対応する能力や資質が一層求められている。
このほか、いろんなところで使われる「知識基盤社会」って何?
確かに、ある日突然出てきたような言葉です。
ここでは、この言葉について考えてみましょう。
興味深い論文を見つけました。
「知識基盤社会」における「学士課程教育」:基本概念の批判的検討 渡 邉 浩 一
ここから http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/1540/1/0130_016_002.pdf
知識基盤社会 は knowledge-based society の和訳です。
この論文の 8/16ページ 3 .「知識基盤社会」という概念 には次のようにありました。
「知識基盤社会」はknowledge-based societyの訳で、「知識社会(knowledge society)」とともに、経済・教育政策関係の文書で近年多用されるようになってきた語句である。導入の経緯については阿曽沼明裕による要を得たまとめがあり、それにしたがえば、「知識社会」とは元来フリッツ・マッハルプ、ピーター・ドラッカー、ダニエル・ベル等が20世紀中葉にアメリカで新たに登場しつつあった社会を名指すために用いた言葉で、それが1990年代半ばのEU経済の長期的な停滞を背景にOECDの科学技術政策担当者たちによって導入された「知識基盤経済(knowledge-driven economyあるいはknowledge-based economy)」という考え方をテコに、「各国の政策に影響を与えるほどの新しい知識社会論へと飛躍させ」られるに至ったのだという。
ここで注目したのは、阿曽沼明裕氏。
彼は、とても身近な 名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教育学部教授 なのです。
名古屋大学大学院教育発達科学研究科は、私が大口町教育委員会の時に、生涯学習講座の講師をお願いしに何度も通ったところです。
その後も、ソーシャルスキルについて、実践研究を進めてきました。
その論文とは・・・
阿曽沼明裕(2011)「知識社会のインパクト」、有本 章編『変貌する世界の大学教授職』玉川大学出版部、68-85頁
amazonでは高価でした。検索したら愛知県図書館にありましたので、後日借りてきます。
ともかく、20世紀中頃から、「知識社会(knowledge society)」という言葉は一般的に使われていたのです。
ここで登場するのが・・・・
フリッツ・マッハルプ 「情報化社会」という概念を最初に広めた人でしょう。
1962年 - フリッツ・マッハルプ 『知識産業』 (和訳 1969年)
ピーター・ドラッカー 説明無用の「マネジメント」(management) の発明者です。ユダヤ人です。
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』で一躍有名になりました。
ダニエル・ベル ユダヤ人です。
脱工業社会、すなわち、第2次産業から第3次産業への移行を予測した人です。その通りになりました。
そうそうたるメンバーです。
ここに一つのポイントがあります。第3次産業、いわゆるサービス産業を「知識社会」ととらえている点です。
次の論文では、別の名前も登場します。
「 知識基盤社会に対応する学力観に関する研究 」
http://repository.aichi-edu.ac.jp/dspace/bitstream/10424/1907/1/jissenkiyo127786.pdf
詳細はここでは省略します。
この「知識社会(knowledge society)」を「知識基盤経済(knowledge-driven economyあるいはknowledge-based economy)」とふくらませたのがOECDです。
「THE KNOWLEDGE-BASED ECONOMY」 Copyright OECD, 1996 という論文があります。英文なので、詳しくは読んでいませんが・・・。
《参考》OECDは「キー・コンピテンシー」という概念を持ちだしてきました。
キー・コンピテンシー すなわち 主要能力 です。
ここでいう能力とは、単なる知識や技能だけではなく、態度や人間性なども含めた包括的な概念です。
○ キー・コンピテンシーは、次のカテゴリーで構成されています。
1 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力 (個人と社会との相互関係)
2 多様な社会グループにおける人間関係形成能力 (自己と他者との相互関係)
3 自律的に行動する能力 (個人の自律性と主体性)
《 参 考 》OECDにおける「キー・コンピテンシー」について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/05111603/004.htm
こうした流れを受け、文部科学省は1999年『我が国の文教政策』で、「知識社会」という言葉を初めて使っています。
これが発展させたのが、2005年 中央教育審議会答申
我が国の高等教育の将来像(答申)
ここからhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101.htm
はじめに
○ 21世紀は「知識基盤社会」(knowledge-based society)の時代であると言われている。これからの「知識基盤社会」においては、高等教育を含めた教育は、個人の人格の形成の上でも、社会・経済・文化の発展・振興や国際競争力の確保等の国家戦略の上でも、極めて重要である。精神的文化的側面と物質的経済的側面の調和のとれた社会を実現し、他者の文化(歴史・宗教・風俗習慣等を広く含む。)を理解・尊重して他者とコミュニケーションをとることのできる力を持った個人を創造することが、今後の教育には強く求められている。また、高等教育においては、先見性・創造性・独創性に富み卓越した人材を輩出することも大きな責務である。
前年の文科省白書を踏まえて、OECDの「知識基盤社会」という語句を用いたのでした。
21世紀は
①知識には国境がなく、グローバル化が一層進む
②知識は日進月歩で有り、競争と技術革新が絶え間なく生まれる
③知識の進展は旧来のパラダイムの転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく判断が一層重要となる
④性別や年齢を問わず参画することが促進される
と説明しています。
ところで、「知識基盤社会」という言葉はドラッガーが考えたと言う人がいますが、それはどうでしょうか。
彼は、知識社会(knowledge society)、あるいは 知識経済( Knowledge economy )と言いましたが、知識基盤社会(knowledge-based society)とは言っていないと思います。
(私の知る限り)
もし使用例があれば教えてください!
現行の学習指導要領の基本的な考え方はで、次のように説明されています。
言語活動の充実に関する指導事例集【中学校版】
第1章 言語活動の充実に関する基本的な考え方 から引用します。
第1章 言語活動の充実に関する基本的な考え方
(1)学習指導要領における言語活動の充実
ア 新しい学習指導要領の基本的な考え方
知識基盤社会の到来や,グローバル化の進展など急速に社会が変化する中,次代を担う子どもたちには,幅広い知識と柔軟な思考力に基づいて判断することや,他者と切磋琢磨しつつ異なる文化や歴史に立脚する人々との共存を図ることなど,変化に対応する能力や資質が一層求められている。
このほか、いろんなところで使われる「知識基盤社会」って何?
確かに、ある日突然出てきたような言葉です。
ここでは、この言葉について考えてみましょう。
興味深い論文を見つけました。
「知識基盤社会」における「学士課程教育」:基本概念の批判的検討 渡 邉 浩 一
ここから http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/1540/1/0130_016_002.pdf
知識基盤社会 は knowledge-based society の和訳です。
この論文の 8/16ページ 3 .「知識基盤社会」という概念 には次のようにありました。
「知識基盤社会」はknowledge-based societyの訳で、「知識社会(knowledge society)」とともに、経済・教育政策関係の文書で近年多用されるようになってきた語句である。導入の経緯については阿曽沼明裕による要を得たまとめがあり、それにしたがえば、「知識社会」とは元来フリッツ・マッハルプ、ピーター・ドラッカー、ダニエル・ベル等が20世紀中葉にアメリカで新たに登場しつつあった社会を名指すために用いた言葉で、それが1990年代半ばのEU経済の長期的な停滞を背景にOECDの科学技術政策担当者たちによって導入された「知識基盤経済(knowledge-driven economyあるいはknowledge-based economy)」という考え方をテコに、「各国の政策に影響を与えるほどの新しい知識社会論へと飛躍させ」られるに至ったのだという。
ここで注目したのは、阿曽沼明裕氏。
彼は、とても身近な 名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教育学部教授 なのです。
名古屋大学大学院教育発達科学研究科は、私が大口町教育委員会の時に、生涯学習講座の講師をお願いしに何度も通ったところです。
その後も、ソーシャルスキルについて、実践研究を進めてきました。
その論文とは・・・
阿曽沼明裕(2011)「知識社会のインパクト」、有本 章編『変貌する世界の大学教授職』玉川大学出版部、68-85頁
amazonでは高価でした。検索したら愛知県図書館にありましたので、後日借りてきます。
ともかく、20世紀中頃から、「知識社会(knowledge society)」という言葉は一般的に使われていたのです。
ここで登場するのが・・・・
フリッツ・マッハルプ 「情報化社会」という概念を最初に広めた人でしょう。
1962年 - フリッツ・マッハルプ 『知識産業』 (和訳 1969年)
ピーター・ドラッカー 説明無用の「マネジメント」(management) の発明者です。ユダヤ人です。
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』で一躍有名になりました。
ダニエル・ベル ユダヤ人です。
脱工業社会、すなわち、第2次産業から第3次産業への移行を予測した人です。その通りになりました。
そうそうたるメンバーです。
ここに一つのポイントがあります。第3次産業、いわゆるサービス産業を「知識社会」ととらえている点です。
次の論文では、別の名前も登場します。
「 知識基盤社会に対応する学力観に関する研究 」
http://repository.aichi-edu.ac.jp/dspace/bitstream/10424/1907/1/jissenkiyo127786.pdf
詳細はここでは省略します。
この「知識社会(knowledge society)」を「知識基盤経済(knowledge-driven economyあるいはknowledge-based economy)」とふくらませたのがOECDです。
「THE KNOWLEDGE-BASED ECONOMY」 Copyright OECD, 1996 という論文があります。英文なので、詳しくは読んでいませんが・・・。
《参考》OECDは「キー・コンピテンシー」という概念を持ちだしてきました。
キー・コンピテンシー すなわち 主要能力 です。
ここでいう能力とは、単なる知識や技能だけではなく、態度や人間性なども含めた包括的な概念です。
○ キー・コンピテンシーは、次のカテゴリーで構成されています。
1 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力 (個人と社会との相互関係)
2 多様な社会グループにおける人間関係形成能力 (自己と他者との相互関係)
3 自律的に行動する能力 (個人の自律性と主体性)
《 参 考 》OECDにおける「キー・コンピテンシー」について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/05111603/004.htm
こうした流れを受け、文部科学省は1999年『我が国の文教政策』で、「知識社会」という言葉を初めて使っています。
これが発展させたのが、2005年 中央教育審議会答申
我が国の高等教育の将来像(答申)
ここからhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101.htm
はじめに
○ 21世紀は「知識基盤社会」(knowledge-based society)の時代であると言われている。これからの「知識基盤社会」においては、高等教育を含めた教育は、個人の人格の形成の上でも、社会・経済・文化の発展・振興や国際競争力の確保等の国家戦略の上でも、極めて重要である。精神的文化的側面と物質的経済的側面の調和のとれた社会を実現し、他者の文化(歴史・宗教・風俗習慣等を広く含む。)を理解・尊重して他者とコミュニケーションをとることのできる力を持った個人を創造することが、今後の教育には強く求められている。また、高等教育においては、先見性・創造性・独創性に富み卓越した人材を輩出することも大きな責務である。
前年の文科省白書を踏まえて、OECDの「知識基盤社会」という語句を用いたのでした。
21世紀は
①知識には国境がなく、グローバル化が一層進む
②知識は日進月歩で有り、競争と技術革新が絶え間なく生まれる
③知識の進展は旧来のパラダイムの転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく判断が一層重要となる
④性別や年齢を問わず参画することが促進される
と説明しています。
ところで、「知識基盤社会」という言葉はドラッガーが考えたと言う人がいますが、それはどうでしょうか。
彼は、知識社会(knowledge society)、あるいは 知識経済( Knowledge economy )と言いましたが、知識基盤社会(knowledge-based society)とは言っていないと思います。
(私の知る限り)
もし使用例があれば教えてください!