昨日は『ハート・ロッカー』を見てきました。
今年の第82回アカデミー賞は、『アバター』対『ハート・ロッカー』が何かと話題でした。
何と言っても、『アバター』監督ジェームズ・キャメロンと、『ハート・ロッカー』の監督キャスリン・ビグローは元夫婦。
(実は、キャサリンはジャームズの3人目の妻で、「ターミネーター」主演のリンダ・ハミルトンのために2年で破局)
『アバター』は総制作費230億円、これに対して『ハート・ロッカー』はわずか約10億円。
どちらもアメリカの負の側面を描いたもので、『アバター』はかつて西部で起こしたような、天然資源をねらっての侵略者から神聖な自然を守るもの、『ハート・ロッカー』は自ら仕掛けたイラク戦争の戦後復興の話。
しかし、ジェームズ監督の『アバター』は母性的、元夫人のキャスリン監督の『ハート・ロッカー』が父性的というのも興味深いところです。
そして、結果は、元夫人の圧勝。
『ハート・ロッカー』が、監督賞と作品賞、脚本賞、編集賞、音響編集賞、録音賞の6冠を獲得したのに対して、『アバター』は美術賞、視覚効果賞、撮影賞の3冠に終わりました。
それにしても、キャスリン・ビグロー監督の気品や美しさは、他の女優顔負けでした。とても58歳とは思えません。
(写真は映画-goo)
さて、内容に入りましょう。
ネット上のあらすじは次のものです。(引用します。)
設定は2004年のイラク・バグダッド。駐留米軍のブラボー中隊・爆弾処理班の作業中に爆発が起き、班長のトンプソン軍曹が爆死してしまう。トンプソン軍曹の代わりに派遣されてきたのは、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹。彼はこれまでに873個もの爆弾を処理してきたエキスパートだが、その自信ゆえか型破りで無謀な行動が多かった。部下のサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は彼に反発するが、ある事件をきっかけに打ち解けていく。 (「ハート・ロッカー」goo映画 より引用)
以下が個人的な感想です
いきなりイラクの街中に放り出されたような緊張感で、約130分間があっという間に感じました。
実にリアルなのです。
次の写真を見てください。どれが映画か分かりますか。
カメラは、ハンディカメラを駆使し、従軍カメラマンのドキュメンタリーのようでした。
BGMは、街中で聞こえるイラクの民族音楽以外はヘリコプターと爆音、銃声のみ。重低音が響く音響効果は抜群でした。
登場人物は99%が男性。
さすがにバグダッドでの撮影は無理でしたが、隣のヨルダンでロケをしています。
さらにリアルなのは、イラク駐留のアメリカ軍の戦死者の大半が、通常の戦闘ではなく、反政府勢力による簡易手製爆弾(IED)によるという事実からです。
イラクの一般市民の死傷者も同様です。
次の写真はWikipediaによるものですが、今日の映画そのままでした。
いわゆる「自爆テロ」、「車爆弾」とはこのようなものだったのです。
イラクの街中、時には体の中にまで仕掛けられたこれらのIEDの処理が、イラク戦争の実体なのです。
常にどこかで誰かに狙われ、いつ爆死するか分からない死と隣り合わせの世界。
観客も巻き込まれ、その緊迫感でのどはからから。
脚本賞受賞のマーク・ボールは、イラクの爆発物処理班に何週間も随行して、兵士の緊迫感や葛藤を目の当たりにしたといいます。
3名の登場人物それぞれの言葉、表情から見えてくる虚無感は、まさに静かな反戦映画だと感じました。
沖縄の駐留部隊も、イラク・アフガンへ派遣されていると聞きます。
反政府軍によるイラク人同士の紛争は続いており、その治安維持にアメリカの若者が命をかけてあたっているのは事実です。
昨日は、パラリンピックのパシュートで、アメリカ人の元兵士が銅メダルを取ったというニュースが流れていました。
アフガニスタンで、爆弾により両足を失っています。
日本でも、国防、基地など、理屈だけで考えようとする人には、ぜひ見てもらいたい映画です。
骨太な映画を選んだアカデミーに敬意を表します。
ちなみに、4枚の写真の1枚目がWikipediaによる本物。あとはgoo映画のからの写真です。
---------ここから先はネタバレ--------
まだ見ていない人は読まないでください。
多くの人のレビューを見ていると、「戦場の狂気」でジェームズ二等軍曹が狂気化し、戦場に戻って行ったという表現がしてありました。
私はそう思いません。
冒頭に『戦争は、麻薬である。』というテロップが流れます。
確かに、ジェームズ二等軍曹が爆弾を処理する達成感により中毒化しているのは事実ですが、狂気ではないのでは。
むしろ、少年を気遣ったり、人間爆弾の男声を助けようとぎりぎりまでがんばったりと、登場人物の中で最も人間的で優しい。
しかも、007でも、スパイダーマンでもない、普通の人間。
悩み苦しみ、家庭に戻って子どもを抱き上げて、
「イラクの人にも同じように家族がいるんだ」と、また戦場に戻っていくジェームズ。
「あと○日」と残りの日数を数えてばかりいるサンボーンと対比して、ジェームズ二等軍曹は男の一つの生き方を描いていると思いました。
今年の第82回アカデミー賞は、『アバター』対『ハート・ロッカー』が何かと話題でした。
何と言っても、『アバター』監督ジェームズ・キャメロンと、『ハート・ロッカー』の監督キャスリン・ビグローは元夫婦。
(実は、キャサリンはジャームズの3人目の妻で、「ターミネーター」主演のリンダ・ハミルトンのために2年で破局)
『アバター』は総制作費230億円、これに対して『ハート・ロッカー』はわずか約10億円。
どちらもアメリカの負の側面を描いたもので、『アバター』はかつて西部で起こしたような、天然資源をねらっての侵略者から神聖な自然を守るもの、『ハート・ロッカー』は自ら仕掛けたイラク戦争の戦後復興の話。
しかし、ジェームズ監督の『アバター』は母性的、元夫人のキャスリン監督の『ハート・ロッカー』が父性的というのも興味深いところです。
そして、結果は、元夫人の圧勝。
『ハート・ロッカー』が、監督賞と作品賞、脚本賞、編集賞、音響編集賞、録音賞の6冠を獲得したのに対して、『アバター』は美術賞、視覚効果賞、撮影賞の3冠に終わりました。
それにしても、キャスリン・ビグロー監督の気品や美しさは、他の女優顔負けでした。とても58歳とは思えません。
(写真は映画-goo)
さて、内容に入りましょう。
ネット上のあらすじは次のものです。(引用します。)
設定は2004年のイラク・バグダッド。駐留米軍のブラボー中隊・爆弾処理班の作業中に爆発が起き、班長のトンプソン軍曹が爆死してしまう。トンプソン軍曹の代わりに派遣されてきたのは、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹。彼はこれまでに873個もの爆弾を処理してきたエキスパートだが、その自信ゆえか型破りで無謀な行動が多かった。部下のサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は彼に反発するが、ある事件をきっかけに打ち解けていく。 (「ハート・ロッカー」goo映画 より引用)
以下が個人的な感想です
いきなりイラクの街中に放り出されたような緊張感で、約130分間があっという間に感じました。
実にリアルなのです。
次の写真を見てください。どれが映画か分かりますか。
カメラは、ハンディカメラを駆使し、従軍カメラマンのドキュメンタリーのようでした。
BGMは、街中で聞こえるイラクの民族音楽以外はヘリコプターと爆音、銃声のみ。重低音が響く音響効果は抜群でした。
登場人物は99%が男性。
さすがにバグダッドでの撮影は無理でしたが、隣のヨルダンでロケをしています。
さらにリアルなのは、イラク駐留のアメリカ軍の戦死者の大半が、通常の戦闘ではなく、反政府勢力による簡易手製爆弾(IED)によるという事実からです。
イラクの一般市民の死傷者も同様です。
次の写真はWikipediaによるものですが、今日の映画そのままでした。
いわゆる「自爆テロ」、「車爆弾」とはこのようなものだったのです。
イラクの街中、時には体の中にまで仕掛けられたこれらのIEDの処理が、イラク戦争の実体なのです。
常にどこかで誰かに狙われ、いつ爆死するか分からない死と隣り合わせの世界。
観客も巻き込まれ、その緊迫感でのどはからから。
脚本賞受賞のマーク・ボールは、イラクの爆発物処理班に何週間も随行して、兵士の緊迫感や葛藤を目の当たりにしたといいます。
3名の登場人物それぞれの言葉、表情から見えてくる虚無感は、まさに静かな反戦映画だと感じました。
沖縄の駐留部隊も、イラク・アフガンへ派遣されていると聞きます。
反政府軍によるイラク人同士の紛争は続いており、その治安維持にアメリカの若者が命をかけてあたっているのは事実です。
昨日は、パラリンピックのパシュートで、アメリカ人の元兵士が銅メダルを取ったというニュースが流れていました。
アフガニスタンで、爆弾により両足を失っています。
日本でも、国防、基地など、理屈だけで考えようとする人には、ぜひ見てもらいたい映画です。
骨太な映画を選んだアカデミーに敬意を表します。
ちなみに、4枚の写真の1枚目がWikipediaによる本物。あとはgoo映画のからの写真です。
---------ここから先はネタバレ--------
まだ見ていない人は読まないでください。
多くの人のレビューを見ていると、「戦場の狂気」でジェームズ二等軍曹が狂気化し、戦場に戻って行ったという表現がしてありました。
私はそう思いません。
冒頭に『戦争は、麻薬である。』というテロップが流れます。
確かに、ジェームズ二等軍曹が爆弾を処理する達成感により中毒化しているのは事実ですが、狂気ではないのでは。
むしろ、少年を気遣ったり、人間爆弾の男声を助けようとぎりぎりまでがんばったりと、登場人物の中で最も人間的で優しい。
しかも、007でも、スパイダーマンでもない、普通の人間。
悩み苦しみ、家庭に戻って子どもを抱き上げて、
「イラクの人にも同じように家族がいるんだ」と、また戦場に戻っていくジェームズ。
「あと○日」と残りの日数を数えてばかりいるサンボーンと対比して、ジェームズ二等軍曹は男の一つの生き方を描いていると思いました。