ウクライナ戦争の報道でよく聞く「戦時国際法」って何?(1)
ここから https://wpb.shueisha.co.jp/news/politics/2022/06/23/116632/
戦争中のルールとはいったいどんなものなのか。
「基本的な原則はふたつ、『軍事目標主義』と『不必要な苦痛の禁止』です。戦争をしている以上、戦闘員同士の戦いは避けられませんが、病院で療養している人や避難シェルターに逃げている子供などの一般市民への攻撃は正当化できません。
また、そんな非戦闘員が集まるデパートなどのような場所への攻撃も禁止。攻撃の対象はあくまで軍事施設に限られます。
また、相手が戦闘員だったとしても、化学兵器やクラスター爆弾など、必要以上に相手を苦しめる武器の使用も禁止です。これらのルールに反する行為は、どれだけ自衛のためだといっても違反になります」
では、それらのルールにのっとっていれば戦争してもいいということ?
「いえ、当然ながら戦争行為は違法です。これはまた別の国際法になるのですが、その武力行使が戦争なのかどうかを見定めるユス・アド・ベルム(jus ad bellum)にのっとって判断されます。
侵略行為は違法ですが、それに対抗するための自衛権の行使は認められています。つまり、ウクライナ戦争において、『両者とも武器を持って殺し合っているなら、けんか両成敗だ』という考え方は国際法では見当違いなのです」
でも、戦争行為そのものが違法なのに、なぜ戦争中の法律があるのか。
「そもそも国際社会において戦争は『絶対に防ぐべきだが、起きるときには起きてしまうもの』という認識なんです。だったら、戦争だからって、人間の心を持っているのならこれだけはせめて守ろうよ、と。その願いを法規範にしたのが戦時国際法。そのため国際人道法とも呼ばれます。
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軍事目標主義
ぐんじもくひょうしゅぎ
doctrine of military objective
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について
戦時国際法
せんじこくさいほう
international law of war
伝統的に国際法は平時国際法と戦時国際法とからなるものとされてきた。戦争が自由に行われたのと対応して、戦時には平時と異なる特殊な国際法が妥当するものとされた。中世から発達を始め、1907年のハーグ平和会議で、かなりの部分が条約化された。戦時国際法は交戦法規と中立法規からなる。交戦法規が交戦国相互の間の関係を規律するのに対し、中立法規は交戦国と中立国の関係を規律する。最近では戦争そのものが国際法上で禁止されているから、従来の戦時国際法がそのまま現在でも妥当するかは問題である。とくに中立法規は第一次世界大戦以来、ほとんど典型的な形では適用される場を失っている。それに反して、交戦資格、捕虜や傷病兵の待遇、文化財の保護、無差別攻撃の排除、毒ガスなど特定兵器の禁止を含む交戦法規は現在いっそう重要性を増している。1949年のジュネーブ諸条約や77年の追加議定書は、それに関するもっとも顕著な国際立法である。
[石本泰雄]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について