あなたも社楽人!

社楽の会の運営者によるブログです。社会科に関する情報などを発信します。

2月12日は新聞休刊日

2019-02-12 05:31:32 | 社説を読む
2月12日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを一部を紹介します。

毎日新聞
・ 米劇作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」がブロードウェーで初演されたのは70年前のきのうだった。ピュリツァー賞やトニー賞に輝き、20世紀最高の劇の一つと評される

▲主人公のセールスマンは63歳だ。若い頃はやり手で、家族からも尊敬されていたはずだったが、年とともに落ち目になる。自立できない30代の息子たちといがみ合い、築いた家庭は崩壊し、行き場を失い悲劇的な死へと向かう

▲第二次大戦直後の好況期、セールスマンはアメリカンドリームの象徴とされた。だが、劇は老いの苦悩や、父と子の対立という現実を切なく描く。時は流れ、現在の日本でも60代の多くは不安を抱えている

▲平均寿命は80歳を超え、60歳で定年退職しても20年以上の余命がある。退職金と年金では不安な「長い定年後」にどう収入を得るか、いかに第二の人生を送るかで迷い、悩む。65歳以上の高齢者は総人口の約28%にあたる約3500万人いる。定年後をテーマとする本がベストセラーになるのもうなずける

▲親子関係で言えば、最近は「8050問題」も深刻になっている。80代になる親が長期間ひきこもる50代の子を支えるという構図だ。長寿化とともに当事者年齢が、かつてに比べ20歳ずつ増している感もある

▲劇は今年も全米をはじめ豪州、英国、カナダなど世界で上演される。時代は変わっても、老いと家族の絆は不朽のテーマだ。老いの期間が長くなったぶん、現代のセールスマンはよりタフでなければならない。


日本経済新聞
・ 外国のスパイらしき人間を捕らえたが「自分は普通の日本人だ」と疑惑を否定する。白黒の判断には「建国記念の日の由来を尋ねよ」と、コラムニストの堀井憲一郎さんが著書「ねじれの国、日本」で提案する。知らなければ白、すらすら語れば予習済みの回し者だと。

▼スパイ判別法はもちろん冗談だが、背景には積年の問題意識がある。10代のころからこの日の由来が気にかかり、周りに質問するがよくわからない。大人になり母校の早大生に聞くと、そもそも2月11日がその日だと知る者が2割程度しかいない。クリスマスやバレンタインデーより存在感が薄い日本建国、というわけだ。

▼日本書紀が描く初代天皇の即位年が紀元前660年。即位日の元日を陽暦にはめると2月11日だとし、明治政府が祝日に定めたのがルーツだ。書紀の記述が「ヤマト朝廷の歴史を長く見せるためのフィクションであることは明らか」(山本博文「天皇125代と日本の歴史」)であれ、祝日には名残をとどめたことになる。

▼書紀を編んだのも明治の初めも、強国に囲まれこの国がアイデンティティーの確立を迫られた時代だ。堀井さんによれば2000年ごろから、こうした由来を知る若者が増えたという。ネットで手軽に調べられるから。古民家や神社など和風ブームの一端。あるいは今が古代や明治など「開国の時代」と似ることの表れか。


中日新聞
・ 十三歳の少年は白黒テレビを熱心に見つめていた。テレビの中で、大道芸人が曲芸を披露している。少年は興奮した。一九四八年、大阪で開かれた「復興大博覧会」。その目玉が白黒テレビだった

▼博覧会の魅力が忘れられなかった少年はやがて通産官僚となって、七〇年の大阪万博開催に奔走する。大阪万博の生みの親の一人で経済評論家、作家として活躍した堺屋太一さんが亡くなった。八十三歳

▼戦後のベビーブーム生まれを「団塊の世代」と名付けたのもこの人なら、規格大量生産に走る当時の風潮を子どもの好物で表現した「巨人、大鵬、卵焼き」も官僚時代のこの人。先見性とアイデアに加え耳目を集める表現の人でもあった

▼「団塊」とは地質用語で、地層中にある周囲とは異なる成分を持つ塊のことをいう。万博に通産省は当初冷ややかで、上司は「やるのなら辞表を書いてからにしろ」と迫ったそうだ。断固拒否した。自身こそ周囲に染まらぬ異なる成分の人だったのだろう

▼日本のイノベーション力の低下について「人生を安全第一と考え、独創と挑戦を回避していないか」と嘆き、特に中央官僚には「『内』の評判ばかり気にしている」と気をもんでいた

▼東日本大震災後の日本を幕末、第二次世界大戦後に続く「第三の敗戦」にあると見ていた。敗戦から立ち上がるヒントをもっと教えていただきたかった。

※ 高齢化、建国の日、堺屋太一がテーマでした。

 いずれも秀逸。楽しめました。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。