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5月7日は新聞休刊日

2014-05-07 05:12:19 | 社説を読む
5月7日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを紹介します。

朝日新聞
・ おもしろい実験をネットでみた。2本の高速道路が合流する場合、どうすればすんなりと車線変更できるかを探っている。「渋滞学」の生みの親として知られる東大の西成活裕(にしなりかつひろ)教授が説明役だ

▼車の代わりに人間が二つの道を歩く。合流する直前まで互いが見えない状況ですぐに車線変更しようとすると、ぶつかりそうになったり、詰まったりする。危ない。そこで合流地点から一定の距離を車線変更禁止とする。するとその間、互いを見合い、譲り合いながら車線を変えられるようになる

▼われ先に走るよりは、まわりとコミュニケーションを取りながら運転するほうが、結果的に速くなる。車間距離を十分に取ることなどとともに、道路の流れをよくするための知恵である

▼この実験は「利他的精神実験」と銘打たれている。西成教授が強調するのは、他のドライバーへの思いやりだ。目先のプラスばかりを追わず、長期的視野を持て。情けは人のためならず。損して得とれ、とも。頭ではわかっていても、なかなか実行できないところが凡夫の悲しさか

▼きのう、Uターンラッシュに巻き込まれた方も多いに違いない。きょうも混雑が続くだろう。渋滞のストレスを長時間受け続けるつらさはいかばかりか。どこにも出かけずじっとしていた身には、お気持ちを拝察することしかできない

▼大型連休が終わる。朝の駅の雑踏が戻ってくる。遅い流れにいら立って、ともすると前に出たがるのを自戒することにする。急がば回れ、だ。

毎日新聞
・ 都道府県で数少ない動物名の入った県名「熊本」の印象は強い。もともと「隈本」だった地名が、加藤清正(かとう・きよまさ)の築城の際に改められたとも伝えられる。その判断が400年を経て地域に貢献するとは泉下の清正公もしてやったり、というところか。いわずと知れた県公認のゆるキャラ「くまモン」の活躍である

▲先月末、東京都内で開かれた切手展でも特別に作られたイラスト入り消印をもらおうとファンが列を作っていた。日銀熊本支店は2013年秋まで2年間の経済効果が1244億円と試算した。海外でもプロモーションを行い、今や国際ブランドをうかがうくまモンに羨望(せんぼう)のまなざしを注ぐ他自治体の、ゆるキャラ売り込み競争は過熱気味だ

▲浜松市の「出世大名家康くん」は昨年の「ゆるキャラグランプリ」で1位の天下取りができなかった責任でマゲを1カ月切り「出家大名」となる憂き目をみた

▲ゆるキャラが40以上もある大阪府は「数が多すぎる」と絞りこみに乗り出した。くまモンに劣らぬ人気者「ふなっしー」の口達者をうらやんだ松井一郎(まつい・いちろう)府知事は人気不振気味の着ぐるみに「しゃべったらどうや」とハッパをかけたという

▲ブランド戦略を背負わされ、ゆるキャラたちの環境はゆるくない。だが、くまモン成功の要因には熊本のブランド向上に有効と判断すればイラスト使用は無料で許可する県の戦略があった

▲「柳の下のドジョウ」とばかりに自治体が横並びで競うのでは味気ない。ひと握りが脚光を浴びる傍らで、リストラされた着ぐるみたちが全国の役所のロッカーにひっそり埋もれているのかと思うと、何やら切なくなる。
 
日本経済新聞
・ 風の壁を抜けると急に、視界が広がる。小さな街並みや工場、光る川が目に飛び込んでくる。壮大な音楽に体をさらわれ、空を滑っていく。作家ヘッセは約100年前、開発まもない単葉機でベルン上空を飛び、その時の高揚感を書き残した(天沼春樹訳「空の旅」)。

▼見習い職人の経験があり、機械に詳しい。好奇心が強く新技術に抵抗が少ない。空中散歩がよほど気に入ったのか。1928年には、開設早々のルフトハンザの定期旅客機でベルリンからチューリヒに旅した。「航空機が何カ月も暮らせる航続距離を持つようになったら、即座にでかけて切符を求める」と書くほどだった。

▼研究家V・ミヒェルス氏によると、ヘッセがそれほど飛ぶことに熱中したのは、飛行に携わる人たちの「不屈の精神」に魅せられたからだという。戦争が起きても夢を追い続けた技術者やパイロットたちの開拓者魂。そこに「なにがなんでも何事かをなしとげなければ」という芸術家の姿勢に通じるものを見ていたようだ。

▼格安航空会社(LCC)ピーチが逆風に揺れている。機長不足で約2千便の減便を発表。旅客機が異常降下も起こした。LCCは低価格・効率経営で大手と競う挑戦者ではなかったか。ずさんな人繰りや運航計画からはチャレンジ精神は見えてこない。「不屈の精神」が失われていては、空の旅、飛行への情熱も色あせる。
 
産経新聞
・ 故赤塚不二夫さんが平成12年に出した『よ~いどん!』(小学館)は、「さわる絵本」だった。「イヤミ」「チビ太」など、カラーで登場する赤塚キャラクターたちは、触っても凸凹(でこぼこ)感で形が分かる。「シェーッ!」「ニャロメ」といったおなじみのギャグも、点字でたどることができる。

 ▼赤塚さんが、絵本のアイデアを思いついたのは、入院中にテレビを見ていたときだった。「画面に目の見えない人が映っててさ、まわりはみんな笑ってるのに、その人だけ笑ってないんだよ。よし、おれはこの人を笑わせよう、って思ったの」。小紙の取材に語っている。

 ▼今年の産経児童出版文化賞の大賞を受賞した『さわるめいろ』(小学館)も、点字付きのさわる絵本だ。ページをめくると、格子や亀甲といった日本の伝統模様が色鮮やかに描かれている。作者の村山純子さんは、その上に樹脂インクの点々をのせて迷路を作った。目の見えない子供と見える子供の両方が楽しめるという点も、『よ~いどん!』と共通している。

 ▼「子供の目に映っている絵や文字を一緒に楽しみたい」。点字付き絵本は大阪在住の視覚障害者、岩田美津子さんの強い思いから、三十数年前に生まれた。最初は市販の絵本に、絵の形に切り抜いた塩化ビニールシートに点字で絵の説明を入れ貼り付けるという方法だった。

 ▼岩田さんは、ボランティアの力を借りて、増えていく絵本の貸し出しも始める。岩田さんたちの活動に刺激を受けて、点字付きさわる絵本も出版されるようになった。

 ▼「ひとりでよんでもたのしいけれど、だれかとよむと、もっとたのしくなるぞ」。赤塚さんは、『よ~いどん!』の後書きに書いている。こんな絵本が、もっと増えればいい。

中日新聞
・ 政治記者は朝、政治家の自宅を訪問し、情報を得る。十数年前、保守系政治家が日経新聞の記者を大切にするという現象があった。スクープを許すかもしれない。こちらとしては放置しておけない

▼なぜ日経新聞の記者をかわいがるのか。噴き出しそうな理由だった。この政治家は日経連載の『失楽園』の続きを一刻も早く読みたくて、この記者に相談していた

▼作家の渡辺淳一さんが亡くなった。どちらかといえば女性ファンが目立っていた渡辺さんだったが、不倫をテーマにした『失楽園』で男性層にまで人気を広げた

▼主人公が最後の晩餐(ばんさん)に選んだ「カモとクレソンの鍋」に男たちは熱狂した。政治家の話はともかく、新聞の連載小説がこれほど話題になることは当時珍しく、新聞小説の新たな可能性を認識させられた

▼渡辺さんの描く男は、どちらかといえば、社会的な成功者や屈強なタフガイではなく、繊細で思慮深く、女性を喜ばせる「男性」だろう。新しい男性像は、高度成長を終え、「深み」を求める時代の空気にうまく合っていた

▼後年のテーマは老い。その理想は「年甲斐(としがい)のなさ」である。「地味な格好をして、恋愛もせず、庭いじりと孫の相手をして死んでいく。そんなもったいない話はありません」。時代に敏感だった流行作家の死。勇気とエールをもらったシニアたちは「年甲斐もなく」嘆いてもいいか。

※ 他社の新聞から入った中日には驚きましたが、『失楽園』の話でした。

 赤塚不二夫や「くまモン」、「利他的精神実験」と話題は多彩です。

 コラムはおもしろい!
 


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