おとといの夜、一瞬迷ったが酒を飲む。
一口飲むごとに乾いた感情が潤ってくる。
淀んだ世界が煌めいてくる。
そうだ。
原尞の処女作そのものだ。
ハードボイルドな世界は無いが、題名だけが立ち上がる。
酔うと世界がぶあああっと息づいてくる。
夜が甦りオレの人生にも光があたる。
そんな錯覚を見せられて気を失う数時間が煌めくのだ。
気が付けば水曜の明け方6時ちょっと前。
まだ酔いがさめないのか気分は悪くない。
体が覚醒し始めたとき二日酔いの地獄を味わうのだ。
酒場の喧騒と客同士の喧嘩と笑い声とXmasBGMと味など分からなくなった水割り。
思い出したくもない情景と音。
そう。もうこれでヤメだ。と守れない約束を独りごちる。
それでいい。いつもそれで一歩また進むのだ。
誰にも言わない。
誰にも言わない。
夜が甦った瞬間は憶えているから。