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酔いどれの誇りと踊る熊へ

横溝正史「恐ろしき四月馬鹿」を考えてみた(ネタバレ)

2019-04-01 14:42:12 | 小説等感想
横溝正史の有名な短編。

大正時代に発表された。


騙す方が逆に騙されたはなし。


ドッキリのどっきり。


とある時代のとある町のM中学校の寮で殺人事件。



寮生仲間をビックリさせようと狂言殺人事件を起こす栗田と小崎。


しかし違和感を察した速水が二人がエイプリールフールに仕組んだ悪戯だと見抜く。


速水は逆に騙される側だった寮生と被害者役の小崎をうまく丸め込んで本当の殺人事件になったと栗田を嵌める。


一杯喰わされた栗田はショックで気絶してしまう。


この物語は結末を話してもちっとも遜色がないのが凄いと思う。



自分の仕組んだトラップに引っ掛かってしまうなんて意外とよくある。


え?ない。私はよくありますよ。


IDや銀行カードやらネットの暗証番号やら…もうそんな感じです。

なぜ今このはなし?




実は世間様では新元号で持ちきりの様子で辟易しているから。



と、思ったのだが半径15メートルの身の回りではそんな雰囲気何処にもない。




マスコミ主導の空気なのか、ネット上の幻想なのか、たんなる自分の色眼鏡なのか。



とにかく車の中でも会社でもラジオもテレビもシャットアウト。




サンマルクカフェでチョコクロかじりながら横溝の傑作短編を


ペラペラとめくって四月馬鹿のはなしを眺めているとみょ~に落ち着いた。


本当は世間など動いていないのかもしれない。



激動の時代、今!とか。新しい時代に突入!とか。



疑ってかかっていきたいなと思うのです。

逆に…

踊らされたいのです。



四月馬鹿で騙されたいのです。



これに激怒せず炎上せず笑って踊らされてみたいのです。


お祝いごとの向こう側にはピリピリした人々の感情が見え隠れしているのです。


余裕のない精神と不安から噴き出てくる怒りの感情。


先行き不透明な時代。使い古されたフレーズ。

不安と恐怖は怒りを生む。

自分だけ馬鹿を見るのはゴメンだ。冗談じゃない。自分だけ損するのは納得できない。


他より少ない取り分なら即刻クレーム抗議だ。


渦巻いている。


こんな凡人の私でさえ凡事生活していて肌身で感じます。



余裕のない時代。余白のない国。余暇の少ない社会。




どんどんズルく賢くなっている私。駆け引きばかり考えてしまう始末。



笑えなくなっていく。これから。



これが少年時代描いていた大人の姿だったのか。


馬鹿でいたい。



痛い男でいたい。











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