FREAKY 13 DEAKY

酔いどれの誇りと踊る熊へ

堀辰雄「鼠」を読みましたよ。

2016-02-24 18:33:14 | 日記
400時詰め原稿用紙にて僅か7~8枚くらいの短編。

10歳の男子の達の物語。

舞台は他愛ない子供の達の隠れ家いわゆる秘密基地だ。

昔の日本には小学生が遊び場に出来るような空き家が沢山あったのだな。

現代の「空き家問題」とは全く違う牧歌的な匂いのする空き家があったんだね。

古畳を数人の仲間同士運び込んで「秘密基地」をこしらえて遊んでいた。

めいめいが持ち寄ったもので遊んでいたがある一人が、ヴィーナス像をうちから持ってきた。

最初は静かに回しながら眺めて楽しんでいたのにそこはやはりアホな10歳男子だ。

取り合いになり壊してしまう…

そこから幽霊騒ぎが起こり、気持ち悪い場所から去っていく男子らをよそに一人通い続ける男の子がいた。

その男子は幽霊騒ぎになった秘密基地で何を見たのか…いったいその男子に何があったのか…

↓   ↓   ↓

一読して10歳前後の自分自身を思い出して軽い眩暈がした。

おそらく個人差はあるが男子の10歳あたりから徐々に性の目覚めに入ると思う。

秘密基地は小学校低学年の時大好物な一つだった。

子ネズミの群れが「秘密の隠れ家」でひっそりと遊ぶのだ。

かび臭い薄暗い空間に居ること自体背徳感の中で遊ぶことだ。

その空間を独り占めしたいな、という記憶もある。

でも間もなくそんな隠れ家や基地を皆捨てていく。



性に目覚め始めた少年はいずれ秘密基地から離れていく。

秘密基地から一人でいたい場所が欲しくなる。それが自然だ。

物語中に、なぜ一人の男子が家からくすねて来たものの一つがヴィーナス像というのも性の目覚めの前兆を

予感させる。

幽霊話をでっち上げひとり通い続ける少年。

突然母親をなくし悲しみに暮れる少年は首の部分だけ見つからないヴィーナス像に母親の顔を見る。

母の亡霊なのか幻想なのかどちらでも良い。

少年はその亡霊と口づけをする…。

おそらくこの少年は他に隠れ家を見つけて遊びはじめた男子らよりも一足早く早熟になったのだ。

50年弱生きていればそんな時間差は何の問題もないと今は思う。

好奇心と恐怖から愛情と恐怖へ。

最初の精通の恐怖感と快感と戸惑い。

恍惚(エクスタシー)を体験した少年の姿で物語が終わる。


その入り混じった感情は10歳過ぎの私にもその後の人生を決定的にしたと思う。

皆そうやって「くぐり抜けて」大人になっていく。そして忘れていく。

思い出す…

小学5、6年生の時のクラスメート。勿論女子も。好きだった子の顔も思い出す。嫌いだった先生の顔も。恋をした

先生の顔も。

そんなことを思い出すのは私一人だとも思う。

きっと他のみんなは子供の進学のことや家のローン返済やら親の介護のことやら諸々の問題で

思い出す余地も余裕も無い。

だからかつて遊んだ仲間の代わりに思い出す。

これからもそうする。









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