タイトルが仰々しいですが、週刊誌Bとか週刊誌Sが取り上げるような下世話なスキャンダラスな話ではありません。ちょっと科学的な視点で流鏑馬を捉えてみました。
先日、鎌倉生涯学習センターきららで大日本弓馬会による『鎌倉の流鏑馬』という講座がありました。大日本弓馬会は春の「鎌倉祭り」で流鏑馬を担当しています。流派は武田流。秋は小笠原流の担当ですが、真摯に神事である流鏑馬に取り組む姿勢は同じです。写真は2年前の鶴岡八幡宮崇敬者大祭の時のものですから小笠原流の射手になります。
この講座では流鏑馬について説明がありましたが、私が最も興味を持った話は、疾走する馬に跨りながら何故射手は身体を上下動せず弓を射ることが出来るかについてです。まず洋式の乗馬方法と流鏑馬の乗馬方法は全く違います。洋式は腰を上下させて体を安定させます。では流鏑馬はどうしているのでしょうか?説明者は「上下動のない乗馬方法を「立透かし」と言い、腰より下の下半身の関節をうまく使います」と話していましたが、なんのことか全く分かりませんでした。もう少し突っ込んで伺うと・・・。
「鐙(あぶみ)」の使い方が独特なのだそうです。具体的には、疾走する馬が伸び上ろうとすると同時に、射手は「鐙」をぐっと踏み込み、馬が地に着くときは射手の足を伸ばす。言うなれば、射手と馬が真逆の動きをすることで、上下動のない安定した動きが可能になるとのことです。
これは波の「山」と「谷」を重ね合わせれば、それぞれが打ち消され一定(ゼロ)となる話と同じです。この原理はノイズレスイヤホンに応用されていますが、雑音を消すには、雑音の山と谷が打ち消されるように同じ周波数の音をぶつければ良いわけです。
流鏑馬は鎌倉時代から行われていた神事ですが、そんな昔から物理学的な動きを体得していたのですから、凄いことです。流鏑馬において敬礼するときは射手は鐙から足を外して行うとも言ってました。それほど鐙は大事な馬具であったようです。