自己と他者 

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田坂 広志『使える弁証法』

2005-12-24 02:00:03 | 歴史・思想・哲学

田坂広志氏著『使える弁証法』を読んだ。

田坂氏の本ははじめて読んだ。以前、MBAの取得者が勧める参考書をランキング化した本で田坂氏が「クリシュナムルティの本」を勧めていたというぐらいしか印象になかった。この本を読んだ後、難しいことを意味を変えずに、いかにして読み手がわかりやすいようにするかという点にこころ配りをしていることが伝わってきて驚いた。

弁証法:広辞苑によると、

「本来は、対話術の意味で、ソクラテス・プラトンではイデアの認識に到達する方法であった。アリストテレスは多くの人が認める前提からの推理を弁証的と呼び学問的論証とは区別した~略~ヘーゲルは思考活動の重要な契機として,抽象的・悟性的認識を,思弁的・肯定的認識へ高めるための否定的理性の働きを弁証法と呼び、これによって全世界を理念の自己発展として認識しようと試みた。~略~。」

→確か、ロースクールでソクラテス式教授法として原因と結果の間を論理でつなげ、弁論を鍛えるための方法として使っているところがあった。

この本では物事それ自身やその栄枯盛衰を理解する思考法として弁証法が紹介されている。印象に残ったところは、

・螺旋的発展の法則

→物事が発展するときは直線でなく、螺旋的に発展する。つまり、古く懐かしい物事に付加価値が加わって発展していくということ。

・矛盾の止揚による発展の法則

止揚:広辞苑によると、

「ドイツ語でアウフヘーブン。廃棄、高めること、保存することの意。ヘーゲルの用語。弁証法的発展では、事象は低い段階の否定を通じて高い段階へ進むが、高い段階のうちに低い段階の実質が保存されること。矛盾する諸契機の統合的発展。」

→全ての物事にはその内部に矛盾が含まれていて、またその矛盾があるからこそ物事は発展する。

大前研一氏も『ザ・プロフェッショナル』の経営に内包する矛盾においてヘーゲルの弁証法(止揚)例にこの発展を説明している。

人間も過去の反省から成長し、矛盾が内包されているからこそ成長するんだろうと思いました。それにしても、田坂氏や大前氏をはじめ、思考訓練ができている人は、読むべきものとして共通しているものですね。