父親から借りた本がある。
磯田道史著『殿様の通信簿』(朝日新聞社)である。前著は『武士の家計簿』。
この本、江戸幕府が隠密(今でいう諜報員)に諸大名の内情を探索させ、それを高官がまとめた『土芥寇讎記』(どかいこうしゅうき)という書を基にして書かれたもの。
世界に一冊しかなく、戦前に旧広島藩主浅野侯爵家に一冊あったが、原爆で焼けたらしい。もう一冊が東京大学史料編纂所にあり、金井圓教授(当時)という人が、原文を解読し、この書物を活字化したらしい。なんと243人の大名の人物評価がなされていたとのこと。この本ではさすがにそこまでの人数はカバーされていない。
本の中で、歴史家の間では知られていたが一般には知られていないとある。確かにこのような本は知らない。
それにしてもスゲー本であり、はたまたなぜ東大に眠っていたのか。まーそれは、いいか、こうして表に出てきたのだから。
現在、選挙でマニフェストが普及しつつあるが、当選して4年後の結果を『政治家の通信簿』あるいは『首長の通信簿』もしくは『知事の通信簿』、はたまた『国家元首の通信簿』でもいいが、評価して出版すればいいのではないか。タイトルを聞いてそう思った。イギリスではマニフェストが選挙前になると普通にキオスクで売られているが、もっと政治の結果を重要視していいのでは、と思うのである。
このコンセプトで政治家の実績、失敗を緻密に調べ、評価して書籍化すれば売れるに違いない。最後の『国家元首の通信簿』は落合信彦氏『ザ・ラスト・ディケイド 巨人・奇人・変人』でやっているが中身はちょっと期待はずれ。
試験期間中なので、終わってから早くページをさきに進めたい。
・・・・・・・・・⇒7月29日読了!!
目次
1.徳川光圀
2.浅野内匠頭 大石内蔵助
3.池田綱政
4.前田利家
5.前田利常1~3
6.内藤家長
7.本田作左衛門
以上。
印象に残った箇所
P.205~206
「結局、鳥居元忠、内藤家長といった家康の犠牲になったと人々というのは、まともな人々であった。史書の中には、何千、何万という人の人生を見て思うが、偉くなる人物は、おのれの勝手がつよく、人のことなど眼中にない。名前の出る人というのは、どこか自分勝手である。それがふつうであって、むしろ、周りにいた人たちのほうが人間的には優れている場合が多い。しかし、史上の偉人のすごみは、それほど自分勝手な男でも、ついていこうと、他人に思わせる何かがある。家康がもっていたのはまさに、その才能であり、鳥居も内藤も、家康の魅力にしたがっていた。」
なぜ、徳川は250年以上の太平の世を築けたのか?というところは非常に興味深かった。これを探るには最大規模の大名だった加賀100万石の前田氏の動向を探ることになる。なるほど、家康はどうしたら最大規模の大名である前田家に謀反を起こさせないようにうまく距離を保っていけるか。悩んだに違いない。