カルロス・ルイス・サフォン『風の影 上』『風の影 下』(集英社文庫)を読み終えた。
今年の7月に刊行された新しい作品である。サフォンはスペイン人でハリウッド映画の脚本なども手掛けている。
Promotionをせず、クチコミで広がってスペイン原書は空前のヒットを飛ばし、ついに日本へも上陸した。
37カ国で翻訳出版され、フランスでは2005年に最優秀外国文学賞という賞を受賞し、この本の火がつき始めた当時、ドイツ外相ジョシカ・フィッシャーという人が、この本を絶賛して、これが広宣の役割も果たしたのか、どうかは知らないが、瞬く間にカオス理論のごとく日本ももれずに世界中を駆け抜けた。
少年ダニエルと作家のカラックスが物語の主人公として並行的に、話は展開されていく。
この物語はかなり、いろいろなテーマが盛り込まれている。途中は、ちょっとやりすぎでは、と思ったが、終盤は心が徐々に温まっていった。
友情、親子愛、恋愛、憎悪、近親相姦、名作の引用、駄洒落、宗教、戦争、内戦、共産主義、富める者と貧しい者、先人たちの知恵、性の欲望、金銭の欲望などなど。
最後には、きっちりまとめ上げられて、どんな読者の心も多少は温めてくれるだろう。
『風の影』、「忘れられた本の墓場」、これらからは、どんなイメージが浮かびますか?