この議論の前提として忘れてはならないのが、誰(主体)が何(客体)を持って市場参加となりうるのか。実はこの部分の議論が今まで乱暴に、素通りされてきたのではないか。
こう指摘するのが、稲葉振一郎・立岩真也 『所有と国家のゆくえ』(NHK出版)である。二人とも専門は社会学。
確かに、つまり所有の問題である。
このブログのテーマにもなっているが、何が自己で何が他者か、という問いにも関わりがある所有の問題。
中国の抱えている問題の理解を深めるために読み始めたのだが、中国は今その問題が表面化している真っ最中だ。
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、ゴールドマンサックスの人が言いだした言葉では南アフリカは含まない)の中でも断トツな経済成長(改革・解放以降年率9%)を遂げている中国にとっては所有の問題はまさに避けて通れない、政策の中心的問題なのだ。
中国では徴税制度が整っていない、税務職員不足のために徴税率がものすごく悪い。そもそも、なぜ我々は税金を納めなければならないのか、という問いに今の中国の政治体制でうまく答えることができるのか。
共産党幹部の汚職・企業との癒着の問題もそう。私有財産と公共財の境界が曖昧だから起こっている問題。
農地の問題(三農問題)もそう。集団所有ですすめられてきた農地改革、農業生産性の向上、この問題の解決となるカギは所有制をどのような枠組みで認めれるか。
先進国でも今は自明として財産権は機能しているが、この先も機能し続けるかは不透明。その問題に離陸したばかりの中国が挑んでいる。