自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
哲学・ビジネス・雑記・洒落物など等

『嫌われ松子の一生 上・下』

2006-10-07 17:01:38 | 小説

山田宗樹『嫌われ松子の一生 上』『下』(幻冬舎文庫)を読み終える。

 主人公の川尻松子は、優秀な成績で小・中学校を卒業し、大学を出て中学校の先生になる。しかし、引率でいった修学旅行中、宿泊先で売店の売上がなくなるという問題が起こった。夕食中、トイレという理由で席を立ったということで容疑が松子のクラスの男子生徒にかかる。

 事実そうだったのだが、松子が問い詰めるも本人は認めず、松子は自分が盗んだことにしてしまい、しかも数千円(時代背景が敗戦・終戦前後の設定のため、今の貨幣価値とはかなり違う)足りなかったため、同部屋だった教員の財布から返すつもりで黙って抜き取って宿泊先側に返金してしまう。

 これが原因で松子の一生は転落していくという話。読む人によっては「①この松子って女は性悪で最悪だな、こういう人生になるのも当たり前」、また別の人によっては「この松子は純粋で人より真面目な奴、人間らしい、ただ珍しいぐらいにツキがなく可哀想な女だったんだな」という二つにわかれる感想を持つように思う。自分は後者だった。松子が何度か騙されるシーンがあるが、こんな経験がある人も実際にいるのではないかとリアルに感じた。

 人間らしさが描写された作品。