上田紀行『日本型システムの終焉』(法藏館)を古書店で購入。
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「個としての自信を回復せよ。」p233
本書で著者が言いたいことはこの一行である。
「個としての自信の回復」の中身は2つに分けて説明している。
①自分の意図せざることをどれだけ楽しめるか
目的達成のための効率は下がるが、意図せざることは見落とした風景と出会う可能性をその内に秘めている。
②目的、合理性といったことそのものに罠が潜んでいるということを認識すべき。
p235
「自信とは他者と比べてすぐれているといった相対的な優越感ではないし、誰からほめられるからえらいといった『いい子』の肯定でもない。文字通り、自分を信頼すること。自分に信を置くという自信である。
この本、かなり面白い。スリランカで宗教、医療人類学を研究していた著者だが、社会学の視点で日本に起こっている数々の問題を考察している。
言っていることはもっともである。私自身、人生のすべては最終的には自分の価値観、迷ったときに立脚する自分内部にある軸に依存すると思っているが、それを確立するべきだとの主張だ。出なければ自分を信ずるなんてことは不可能だ。これさえあれば、迷ったときに気持ちが揺らぐことがない、それどころか迷いのほとんどは迷いのうちに入らないことに気づく。
宗教を装った似非宗教、TV番組の捏造、そして政治家の不遠慮な発言、企業の不正、不正会計、保険会社の未払いなどなど。自分の価値観に信念を持っていれば、これらの罪に加担することもない。たとえば発言した政治家へ一票を投じていればそのあなたは知らないでは済まされない加担者だ。不正企業の社員であればそのあなたも世間から見れば加担者だ。そしてTV番組に関しても踊らされているあなたはすでに被害者ではない、加害者だ。
このように現代の社会はクレイジーです。この波荒れる時代を生き抜くにはぶれない価値観が必要でしょう。そのためには、常に常識を疑ってみる、何故そうなるのか?と好奇心を表出させる、ちょっと待てよと一歩引いて考える、癖をつけるだけでだんだん、何が正しくて、何がおかしいか、何が人の道で、何が邪道かダークサイドか?分かってくる。
自分ではそう思って生きています。揺らぐことの無い価値観という軸、幹を自分の中に育てたい。
自分の価値観、信念=死守するもの。したがって、文字通りこれが否定されれば自分の存在意義がなくなってしまう、だから絶対に、死ぬ気で守るもの。
☆ちなみに著者の作品で『宗教クライシス』というのがありますが、きちんと体系立てて「いじめ」というのは人類に農耕社会が形成されたときから存在し、無くなるものではないことをきれいに理論化しています。面白いです。キーワードは移動と定住です。