自己と他者 

自己理解、そして他者理解のために
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相田みつを『いちずに一本道 いちずに一ッ事』

2007-05-07 22:03:58 | 小説以外 

(角川文庫)を読む。

この人の何がすごいか。彼曰く、禅の訓えに従って、競争せずにどうやって生きるかを考え、習字の先生を辞めて(地方の競争が激しかった)、包装紙のデザインをするという仕事を見出し、自分で仕事を取ってきたことだ。これを「具体的に動く」と著者は呼ぶ。

つまり、営業ですね。十件まわって、すべて断られる。

理由は二つ。①無名で保証がない②当時、デザインに金をかけるという意識がなかった。

だそうだ。

それでも真剣にたずね続けていると、こういったやり取りに出遭った。

p159~

「私は、これこれこういうもんですが、お宅の包み紙のデザインの仕事をやらせてもらえませんか?」

と、いいつつ、肩書きなしの名刺を渡す。

「あなたはどんな経歴の方ですか?」

「経歴や肩書きは何もありません。立派な肩書きがあれば、ここまで注文を取りに来ません。ないからきたんです。」

「あなたはどこか、他の店の仕事をやっていますか?」

「いいえ、やっておりませんお宅が初めてです。」

「どうしてうちに来ました?」

「はい、お宅がこの町で一番良いお店のように思いましたので」

「何か、今までにやった見本の仕事はありますか」

「いいえ、ありません、こちらが初めてです」

「ほう、初めてですか?うちで今使っている包み紙はこれですが」

「これよりもいい仕事ができる自信はありますか」

「そんな自信はありません。あるのはうぬぼれだけです、そのうぬぼれもやってみなければ分かりません」

「うん、確かにそうだ。おもしろい、ここは一つ頼んでみるかね」

で、しかも、このあと、手付金として、前金までを受け取ってしまう。

すごい話だが、世の中にはいろいろな人がいるものなんですね。

で、デザインは気に入ってもらえて、30年以上が経つ。すごいですよね。

この話。